道9

2013/06/29

「彩花ちゃん、元気ないなー」

 

「どうした?」

 

「そんな事ないですよ。吉沢さん」

 

「彩花ちゃんが来たおかげで、直紀は結構変わったし、俺的には、彩花ちゃんが元気じゃないと

張り合いなくなっちゃうんだよな。そして多分直紀も」

 

「そんな事、本当に無いです。私なんて、取るになり無い、何にも出来ない人間なんです」

 

「直紀、あれで相当心開いてるけどな」

 

「昔さ、親友に裏切られてね。あいつ」

 

「オーディションに申し込んでおくって言っておきながら、直紀の分は申し込まず、

そいつが役取ったんだ」

 

「直紀はそれ以来、才能もあるし、リーダーシップもあるのに、今のメンバー以外は仕事として、

決して組もうとしなくなった」

 

「オファーは沢山来てるんだけどさ」

 

「だから、振り付けの仕事増やしたのは俺には驚き」

 

「自分のクリエーションを人に、ストレートにぶつけて出すのは結構勇気いるんだよ」

 

「だから、彩香ちゃんは何もしてないわけじゃないの。もっと自信もちな」

 

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとうございます。おせっかいな吉沢君」

 

「あ、あれ?直紀お前今日来る日だっけ?」

 

「来ちゃ悪いか?」

 

「いや。悪くない。彩香ちゃん、直紀よろしくー」

 

まったく。だから悪友は・・・。

 

「帰るぞ」

 

「あ。は、はい」

 

「ポーカーフェースもできない」

 

「職場の皆に心配かける」

 

「それってどうなんだ?」

 

「演者としてどーなんだ?」

 

車の中。

密室でのお説教は辛い。

 

「耳が痛いです。すみません」

 

「最初の頃のガッツなくなったなら、帰るか?田舎に?」

 

「やだ」

 

「一度位、帰ってみたらどうなんだ?」

 

「いやです」

 

「ここに居ても、苦しいだろ」

 

「どこでも苦しいなら、ここがいいです」

 

「おいおい。ここが地獄みたいな事いうなよ」

 

「ここには、私をちゃんと見ててくれる人いるから・・・」

 

「今日だって。心配して直紀さん来てくれたんでしょ?」

 

「打ち合わせの仕事終わったって言ったって家に帰っててもよかったんだし」

 

「ん?」

 

「なんだ?つまり、また、試したいわけだ?」

 

「かまって貰える価値があるかどうかってやつか?」


違う。感謝してるんだよ・・・。それを伝えたいだけ。
でも、でも、

やっぱり、私を気にかけてもらえてるかどうかは確かに気になる。

心配なんだもん。

 

 

・・・

 

 

「なんなんだ?その自信の無さは」

 

「自分でも、めんどくさいと思うけど」

 

「ま、お仕置きだな」

 

「えっ」

 

「えー。じゃない」

 

「語尾伸ばしてないです」

 

「口答え10発追加な」

 

「ひどい」

 

「さらに10発」

 

ひどい。ひどい。迎えに来てくれて、ハッピーだったのに。

何でお仕置きなの?

 

家着いたら逃げちゃおっと。

 

 

「彩花、お仕置き追加になるような事考えたりしないほうがいいぞ」

 

ぎくっ

 

「顔にでやすいからな。お前は」

 

ぎくっーーーー

 

「心配してくれるのと、からかうのとどっちかにしてください」

 

「俺は大真面目だ」

 

バカ。

 

心配したって言ってくれさえしたら、私の不安は消えてなくなるのに。

 

直紀さんはモテル。いつか、いつかどこかへ行ってしまう。

 

 

『いい加減にしろよ』

 

『誰かが、どうなるじゃなくって、自分軸で考えろ』

 

お仕置きされながら言われた言葉が不意によみがえる。

 

あれ?そうか・・・。

 

 

「ごめんなさい」

 

「どした?急に、お仕置きの数は減らさないぞ」

 

違うもん。バカ。

あなたのストレートな言葉はときにあとでジワーと効いて来るんです。

 

「よしよし」

 

なんで?あれ?お仕置き前の不意の頭なで???

 

 

「たっぷりお仕置きしような」

 

って、どっちなんですか、師匠。優しいのに、怖い。

 

「膝においで」

 

「あ、たとえば、荷物を部屋に置いてからとか?」

 

・・・

沈黙って怖いよね。もう、「はい」っていうしかないじゃん。この空気。

 

「すぐ乗らなかったから10発追加」

 

「あっという間に30発追加だな」

 

パチン パチン

 

さっさとスカートがまくられ、大嫌いな瞬間。

 

その上、パンツも当然下ろされる。

 

もっと、大嫌いな瞬間。

 

「ひー」

「やだ。やだ」

「ごめんなさいって言った」

「反省してます」

 

「反抗した、あの心意義はどうした?」

 

 

「だ、だって、痛い」

「痛いよな。痛いように叩いてるから、当然なんだけど」

 

「痛くなくても、分かるから」

 

「痛くされて、同じ事繰り返すようなおバカさんには、たっぷりとお仕置きしような」

 

「あーーーー。待って、足、足組むのやだ」

 

「いったい」

「やだ。超痛い」

「痛いの。本気で痛いの」

 

「それは良かった。俺の本気が伝わって何より」

 

久しぶりのお仕置きは、かなり厳しい。

久しぶりすぎて、叩かれ始めて、ようやく、痛みを思い出し、ここまでの数々の失言にようやく後悔する。

 

「定期的に叩かないと、こんなに反抗的になるんだな」

「びっくりだ」

 

正直、私もびっくり。

もっと素直だったよね。最初の頃は。

 

忘れちゃうの。痛さって。

そして、叩かれて思い出すの。

 

ヤバイって。

 

 

「ごめんなさい」

 

こうなれば、ひたすらお詫び。

それくらいには知恵もついたけれど、師匠のほうが上手。

 

「追加はいくつだっけ?」

 

「さんじゅう」

 

「三十です。だろ。敬語使うの忘れない様に10発追加しておこうな。これで40」

 

とかっていいながら、確実にカウンターをカチカチとあげていく。

 

恐ろしい人。

 

どこが、心開いているんだかちっとも分からない。適当な事を吉沢さんったら。

 

「反省が出来ない子はどうなるんだ?」

「ちゃんと躾けたつもりだったけど、最初から教育しなおすか」

 

「ごめんなさい。もうしません」

「みんなに心配かけるような態度とりません」

 

「ちゃんとやる?」

 

「やります」

 

「田舎、帰ってもいいんだよ」

 

「帰らないです」

 

いつもの儀式的な・・・。あれですが、これをキチンといわないと

終わってくれない。

 

そして、何故か言い終わると、自分の中でも力がわいて、よーしって思うのが不思議。

 

「直紀さん、私、怠け者ですよね。すみません」

ふわっと頭に手が。ぽんぽんってされた。

 

「人間だれしもそーじゃないのかな。だから強くありたいと思って練習繰り返すんじゃないのかな?」

 

「よし、じゃあ、お尻冷やしておこうな。痛かったな」

 

そういって、ようやく膝の上からおろしてもらえた。

 

 

私、吉沢さんの言うように、私が居る事で誰かには貢献してるの?本当に?

なーんにも出来ないと思って、悲しかったのに、

 

私が居る事だけでも、ほんのちょっと良いことある人がいるの?

 

それを伝えてくれた、吉沢さんに感謝。でも、誰よりも尊敬は、直紀さんしかいない。

 

直紀さんに認められたいヨーーーー。