道8

2013/06/25

右も左も分からず、

 

ただ、この人しかないという一方的な勢いだけでたどり着いた、直紀さんの所。

 

あれから3ヶ月近くが経とうとしていて、日々は忙しく、

刺激も多く充実してる。

 

沢山の人に囲まれ、

尊敬する人も、温かい人も沢山周りにはいる。

 

なのに、どうしても一人になりたかったり、

孤独だなーと思ったり。

 

何か、純粋にこの場に居られない瞬間がやってくる。

 

「なんだ?ホームシックか?」

 

「違います」

 

「なに?じゃあ」

 

「何って、別になんでもないです」

 

ストレッチしながら、ふいに直紀さんが話しかけてきた。

おかしな所、無いはずなのに。

 

「見てみぬ振りしてたけど、時折、悲しそうな顔するから」

 

「え?」

 

「ワンコは正直だな。すぐ顔にでる」

 

「人に合わせてばかりで、自分の中から何がしたいが生まれなかったら、いつまでもそうやって、人との距離ばっかり計って生きていくことになるぞ」

 

「それがいやで、ここに来たんだろ」

 

あれ?

お仕置きじゃないのに、泣きそう。

 

「なんで」

 

「あのね。3ヶ月も一緒に居たら、わかるでしょ」

 

「ましてや、俺の仕事は感情を体で表現する仕事なの。どうしたって目が行くんだよ」

 

女心分からないって皆言ってたはずなのに。不器用だって言ってたのに。なんで?

なんでしかも、不意打ちなんてずるい。

 

「それでも、自分で何とかしようとしているみたいだったから、何も言わなかったけど」

 

「苦しいんだろ?」

 

「何がしたいか言ってみな」

 

何にも思いつかない。

悲しい。

自分が何がしたいかは、もう叶っちゃってて、これ以上何にも無い。

 

「直紀さんの舞台で踊る姿みたい」

 

「いいよ」

 

「それから?」

 

「直紀さんの振り付けも見たい」

 

「いいよ」

 

「他には?」

 

「わ、私も踊りたい」

 

「よし、よく言った」

 

「じゃあ、これから毎日スパルタな」

 

「え?」

 

「なんだ?不満か?」

不満なわけない。凄く嬉しい。

「お稽古付けてくれるの?ですか?」

 

「5時起き。死ぬ気でやれ」

 

げっ。

 

「ワンコ、正直だな」

よしよしって、嬉しくない。

 

「遅刻したらお仕置き」

 

「言われた事できてなかったお仕置き」

 

「どうする?」

 

「や、やります」

 

「そーだよな。自分でやりたいっていったんだもんな」

 

 

気にかけてもらってたという事にうかれて、

歯磨きしてても、にやにやしちゃう嬉しさとはでも、

現実はちょっと違った。

 

最初にメニューだけ渡されて、でも始まってみたら、全くかまってくれない。
声もかけてくれない。

まるで職人の師弟関係みたい。

弟子は黙々と・・・。って感じ?

 

直紀さんがスタジオ使って、私はスタジオ横のスペース使って練習した後、朝食を一緒にして

一日行動を一緒にして、(部屋の隅で私は大人しくして)

直紀さんを目で追って、一日が終わる。

 

いつになったら、見に来てくれるんだろうと、メニューをこなしてても、
10日も過ぎると張り合いがなくなってくる。

横の部屋にはいるのに。

 

つまんないな。

 

 

 

 

 

「いい加減にストレッチすると怪我するぞ」

 

びくっとなる。

 

恐る恐る振り返ると、いい加減なことが大嫌いな人が立ってた。

 

だって、今までちゃんとやってたんだよ。

 

よりによって、なんで今日だけ見に来るの?

 

「かまって欲しいからやるなら、俺は稽古つけるつもりない」

 

あ・・・。

 

そうだった。

 

「自分で踊りたいといったら、それは孤独だけど、自分だけとの戦いで、

俺は手を貸す事はできるけど、その戦いに参戦はできない」

 

「はい」

 

「分かったみたいだけど。約束は約束だかから、あとでお仕置きな」

 

「はい」

 

 

膝に来なさいといわれて、当然だと思った。

しぶしぶ膝の上に乗ったのは、自分が情けなかったから。

悔しい。

 

自分で変わりたいって思って、踊りたいって言ったはずだったのに。

 

「ちゃんと、感情表してごらん」

 

そういって、ほんのちょっとだったけど、泣いてしまった。

 

パチン パチンというお仕置きが痛かっただけじゃなくって、

 

何か、自分の心に届いた。

 

「い。痛いです」

 

「やると決めた事がちゃんと出来ない悪い子にはお仕置き」

 

それしか言ってくれないけれど、多分、いつもだったらもっと叩かれてたと思うのに、

すぐに膝からおろしてもらった。

 

「続けるの?」

 

おでこの生え際なでられながらの質問。

 

「つづけます」

 

「よし。自分からちゃんと人の目見る事できるようになったら、一歩成長だ」

 

あれ?

 

初めて褒められたかも?

 

わさわさって髪の毛なでてもらった事はあるけど、

それとは違う。

 

えーん。泣ける。

 

だって、本当に尊敬してる人なんだもん。

直紀さんは私にとって偉大な師匠なんだもん。

そして、師匠は、ずっと高い所にいるんだと、

踊りだけじゃなくって、いろんな意味で高い所にいるんだって思った。

 

「誰かの評価待ちながらやっている内は、稽古はつけないからな」

 

「はーい」

 

「明日から覚悟しておくように」

 

「え?」(喜)

おもわず声がはずむ

 

「言っとくけど俺は厳しいからな。自分がやりたいと言ったって事、忘れずについてこい」

 

「はい!」

 

本人に言うと、調子に乗るから言わないけれど、彼女はセンスがある。

表舞台に立つスター性を持っているからチャンスはあると思う。

 

ものになるかどうかは、誰も確証をもてない世界だから、

努力だけではつかめないチャンスを、それをつかむかどうかは本人の意思の強さだと俺は思う。