道27
2020/1/12
「彩花、年末年始はどうするんだ?」
「え?特に何もないですけど」
「何もないじゃなくて、家に正月位帰れ」
「えっ」
「『え』じゃない」
「お前の事大切に思っている人にはちゃんと定期的に顔みせておけ」
「だって、電車代だってかかるし」
「ちゃんと家に帰って、元気な姿みせてこい」
「直紀さんうちの親からなんか言われたの?」
「いや。ただ元気にしてるのかって、俺のおふくろが電話してきたからな。もう12月なのに家に帰るのかどうか
連絡してないだろ」
だって・・・と言いかけようとしたら、かぶせるように
「言い訳はいらない」
「体なまっちゃうし」
「どこでだってストレッチ位できる」
面倒なのに、なんでなんでーーー。と思ってちらっと横顔みてみたけど、
交渉一切受け付けない顔してた。
「わかった。ちょっと帰る」
ぶすっとしながら直紀さんに伝える。
「そうしてやれ。お前の努力でここまで来たけど、自分を応援してくれてる人がいるから
舞台に立って力を発揮できるんだからな」
「一瞬一瞬、人との縁は大切にしろ」
「別に家族だし。そんなの大げさ・・・」
「なんかいったか?」
「何でもないです」
ちょっとぐずぐずいいたくなっただけ。お母さんもお父にも、そういえば顔見せてなかった。
「一週間位帰ってこい」
え・・・そんなにすることないし
「私邪魔だったりします?」
「正月位一人にさせろ」
それしか言ってくれなかった。
なに!もう。私がいると迷惑みたいな。
ひどい。
いいもん。いなくて寂しいって感じる位にながーーーーく家に帰るから。
「直紀も元気そうだから、心配しないで。指もちゃんと動かしてるし、まあ入院じゃなくて日帰りだったもんね」
「美穂さん?ちょっと電話していいですか?」
『あけましておめでとうございます』のスタンプ送ってみたら美穂さんから気になる返信。
聞いてみたら、直紀さんずっと腱が痛むから手術することになってたんだって。
聞いてないし。聞いてなーーーい。
と怒りに任せてそのまま上りの新幹線の切符の日付変更。最速で帰れる時間で取り直して、
予定より早めに戻ることした。
「もう。何で秘密にしてるの?」
「何で言ってくれないのーーーー」
「彩花?月曜もどりじゃないか。まだ数日あるだろ」
「なんで。なんで教えてくれなくって、美穂さんは知ってるのに」
「やれやれ。ヒステリーだな。お前に言うとそうやって、パニックのようになるだろ」
「ならないし!」
「じゃあ、ちゃんと話すから、落ち着いて聞けるか?」
「聞ける」
「まあ、簡単な手術なんだ。俺がお願いしている主治医の日程と俺の日程を合わせてたら、単に年末になっただけだ」
「昔の古傷だな。無茶した罰だ」
「罰って・・・」
「指動かして、リハビリするしてたらすぐに元のように動かせるらしい」
「痛い?」
「まあ、チョットは痛いが、大したことない」
「左手だしな。彩花のお仕置きなら、今からできるぞ」
「え?」
「連絡なしに勝手に戻ってきたりして、心配するだろ」
「だって、行きだって一人で新幹線乗って帰郷したわけだし」
「日程変更するなら、連絡すべきだな。それにお母さんが持たせたかったお土産とかだってあっただろうに」
「いいがかり」
「いいがかりじゃない」
「他人の気持ちに対して、想像力働かせて行動しろと言って帰したはずだ」
「だって、直紀さんが言ってくれなかったから。私、心配したんだから」
ひるんでしまう。ちょっとまずい空気。
『だって』
その言葉がふさわしくない事、私だって分かってる。
「彩花」
「ごめんなさいが言えないのな」
い、言わない。
だって、だって、悪いのは隠し事してた直紀さんだもん。
「戻ってきたら話そうと思っていたんだ。お前が心配して正月には帰らないとかって言いだすと思ったから」
えっ
エスパーですか。
「わかりやすいからな。彩花は」
ちぇ
「人に感謝すること。そして自分がどれほどの人に支えられてるか想像力働かせること」
「何を得て帰ってきたかはお前のものだが、1回だけじゃなくて今後もずっとずっとそのことについて考える必要がある」
「お前を贔屓に可愛がってくれる人を、お前を応援してくれる人に感謝しろ」
「なんか、いなくなっちゃうみたいだから、やだ。もういい」
「やだじゃない。大切な事だ。ちやほやされるようになって、そういう事を忘れて天狗になるな」
「支えてもらった人がずっと彩花を支え続ける人もいるだおろうし、その時々に変わる事もある。むしろ人の気持ちは
変わっていくものだからこそ、感謝を伝えられる時にその人にはちゃんと正面向いて自分の気持ちを表せ」
「私、変わらず、ずっと直紀さんの元で勉強してたい」
「ずっとが約束できるかは分からないが、ここに置いている間はちゃんと見てる」
「彩花が努力した結果、掴んできたものを大切にしているのは分かってる。ご両親の事だって大切にしているのも知ってる」
「それはお前がずっと頑張ってきたのを見てるからちゃんとわかってる」
うるっ。そんな事めったに言ってくれないのに、今言うなんてずるい。
「直紀さん、本当に痛くない?もう平気なの?」
「リハビリは必要だけどな」
「さ、お前はお仕置きな」
「えっなんで?」
「帰る日連絡もせずに変更したこと。大体、急に日程短くするなんて、お父さんとお母さんに申し訳ない」
だから、それは直紀さんが悪いのに。
「出来事に対してそのまま反射で行動するな。ひとまず自分で深呼吸して自分で考えて行動しろ」
「はい」
「ふくれっ面だな」
悔しくて目を反らす。
「膝に来なさい」
下を向く私・・・・。
やだーーーーー。
「お正月早々にお仕置きなんて、やだ」 と床に向かって一応言ってみる。
「お仕置きしたら手にもよくないし」
「彩花?俺は一度しか言わない。そして二度言わせるとどうなるか知ってるな?」
ひっ。やばい。
しぶしぶと膝の上に乗る。
知ってる。回数増やされるって事位。
「いつの間にか随分我がままになってるみたいだな」 パチン!
だって、それは直紀さんが・・・。
「ぶすっとしないで返事」
ピシリとお尻をもう一回叩かれ、スカートがまくり上げられる。
え。やだ。やだ
やっぱりやだ。
そのまま無常にも下着も下される。
「お尻隠してるその手はなんだ?」
「左手は術後だから、あまり押さえられない。だから動くなよ」
でた、暴君。
さっきまで全然平気って言ってたのに。そうやって私が我慢するように言葉巧みに操ってくる。
「悪化させる気は彩花にはないだろうが、頼むな」
酷い。
鬼。
頼むな。なんて、普段なら絶対に言ってくれないのに。こういう時に使うってさすが。
こんなの言われたらもがけないじゃん。
仕方なくお尻から手をどける。
パチーンとものすごく痛いのが降ってきた。全身力が入るけど、
腰に回された左腕は軽く乗せられたまま。本当に押さえるつもりはないらしい。
ひーーー。ぎゅっとこぶしを作って耐える。
「おー。いつもこれ位ちゃんと姿勢保つようにできるといいのにな」
パチンパチン パチン パチンと容赦ない。
動いたら駄目だと耐えようとする分、余計痛い気がする。
「ていうかやればできるのに、やらないだけか」
「い、痛い。痛い痛い」
「動かないの無理。痛い」
「じゃあ、立ってお仕置きするか?」
立ってってするときは、必ず道具使う時だもん。
「や、やだ」
「この姿勢で我慢するのか、立ってお仕置き受けるかどっちにする?」
二回言うって、流石オニだけのことはある。絶対に私がちゃんと返事するまで許してくれない。
「このままがいいです」
「やああああ。痛い。痛い」
「やなのか、このままでいいのかよく分からないな」
そういってくすっと笑うとかって、本当にドS
分かってて言ってるくせに。
「ちゃんと親を大切にするし、直紀さんにはちゃんと連絡する」
「まあ、正月だしな。これくらいにしておくか」
ふえーーーーー。解放。痛かった。
「じゃあ、仕上げな。後何日予定では滞在しているはずだったかというと、金、土、日、月。4日か」
「仕上げは40で足りるか?」
本当は4発でいいのに・・・
足りるとか、そういうレベルじゃないのに。
同意を求めるとか本当に無いから!!
私が了承したみたいになるじゃん。嫌だって言ってるのに。お仕置きなんて嫌なのに。
「返事をしない反抗分10発追加な」
「ご、ごめんなさい。反省してます。仕上げは40で大丈夫です」
「50って言っただろ」
「・・・50で反省できます」
くそーーーーーーー。鬼っ子。
今絶対に悪い顔してる。絶対に。
そうしてビシビシと50発が始まって、私は素直にごめんなさいを言う事と、親を大切にするという事とを誓わされ、
人との縁を大切にするというのを新年の抱負な!と強要された。
ちょっと反抗して、返事しぶったらさらに10発追加されて、ようやく解放された。
お正月なのに。
お仕置きが痛くて散々だったけど、
でもやっぱり、早く直紀さんが元気だというのを見れてよかった。
「今ってなんでもデジタルで、秒で連絡つくけど、やっぱり人に会うって大事だよね」
「直紀さんが何ともないのが分かって安心した」
「大人みたいな口きいて」
と笑いながら言われたけれど、
今年一年の始まりにお説教とお仕置きとで始まったけれど、それでも、それでも
本当に直紀さんが踊りに影響あるような体調不良じゃなくて本当によかったし、
今元気そうな姿見れたのは本当にうれしい。
「直紀さんの出会いに、感謝してます」
お仕置き終わって、紅茶のみながら、直紀さんにつたえた。
私の本気の言葉。
そしたら、痛いはずの左手で頭なでられた。
「大丈夫だ。俺は丈夫に出来てる」
そういってくれたから、ほっとしたのは紅茶のおかげ・・だけじゃない。
もう怒ってないし、私の心配したという気持ちは伝わってる。
~蓮の花~