道17

2015/05/04

がむしゃらに追う立場の時は目標も定めやすい。

 

いつか、○○みたいになりたい。ああいう風に踊りたい。舞台に立ちたい。

中堅どころになって来ると、未来が不安になる。

もちろん、最初っから不安が無かったわけじゃないけれど、

今の方が不安。

 

これからも仕事あるのか?

とか、年齢行った時、私はどうするのか?とか。

直紀さんみたいに、誰かを教える程の能力はないし、

雑用はできても、それで満足できるかどうか・・・。

 

だったら、舞台を一本でも多くって思うけれど、でも、お声がかからなかったり、オーディションに受からなかったりすると

やはり凹むし不安になる。

 

こんな生活でいいのかなって。

 

「美穂さんは未来に不安覚える事ってないんですか」

 

久しぶりに相談。

相談に乗って欲しいといってお願いして、食事につきあってもらった。

 

「私誘ってくれる人いないし、直紀さんは遅くなると今でもすっごく怖いからあんまりお店知らなくって」

「そうね。少しは遊ぶ事も覚えておいた方がいいのかもね」

 

「未来には誰でも不安があるんじゃないかな」

 

そういって、私の話をずっと聞いてくれた。

 

それでも私の中の不安はどんどん増幅して行く。どうしていいのかわからなくなって、朝のストレッチも、なんとなくのおざなり。

誰が見ている分けでもないし、と力も入らない。

 

 

 「彩花、気の無い動きで朝ストレッチなんてする必要ない。今すぐ荷物まとめて実家に帰れ」


そんな日々が2週間続いた所で、突然直紀さんにある夜言われた。


「なんで、理由は?」


「今言っただろ、やる気が無い奴が体動かしたら怪我するだけだし、周りにも悪影響だ」


周りなんていないし、人から影響されるなって何時も言ってるくせに。

私は何でそんな風に言われるのか分からないし、これでも一人でそれなりに悩んでいるのに、急にそんな事を言われて腹が立った。


「ふくれてるだけじゃ、何にも解決しないぞ。質問があったらしろ」


俺も甘い。サッサと追い返せばいいものを。

何人も、挫折してきている人間みてるから、ここで踏ん張れるかどうかが一つのステップなのはわかってる。


できれば彩花には頑張ってほしいが、こればかりは、人から言われてどうにかなるものでもない。



「オーディション全然通らなくって、自信無くして」


「それから?」


「そ、そしたら、自分が今やってる事も全部自信無くなってきて」


「何したらいいのか分からなくなって」


「何で俺にそう話さない?」



「甘えてるって言われるか、相手にされないかどっちかだと思った」


「ふっ。良くわかってるな」


ひどい。やっぱり・・・。



「いいか?誰もが未来に不安はある。こういう職業は得に。しかも体が資本とあれば色々と神経質になるのは当然だ」


「自分の道を考えるのは、当然だし、それはとてもいい事だが、今を着実に生きる事をしなければ、未来もいい加減なものしか作られない」


「なんで?」


「今頑張らなかったら、誰が、次に使いたいって思うんだ?いい加減な事をだらだらやってる姿みて、誰が興味持つんだ?」


「あ」


「わかったら、膝に来い。たるんだ考え直してやる」


「い、今のお話で、理解しました」


「理解だけで、実行しないとダメなんだぞ」


「できます。実行します。心入れ替えて頑張ります」



「よし」


「膝に来なさい」


ああ・・・・だから・・・・


「彩花?何度も言わせるとどうなるか知ってるよな?」


はい。知ってます。今すぐ 『はい』と返事して、お仕置き受けないと追加されるの、ちゃんと体験済みだし。


「毎日の積み重ねをちゃんとやると約束した事、守らなかった事。それと、俺に相談しなかった事。しっかり反省しろ」


パチン パチンと容赦なくお尻が叩かれる。

だって、相談したら、お仕置きされると思ったんだもん。



「そ、相談したら、お仕置きしなかった?」


「したね」


そんな、あっさりと・・・。


「なんで、相談しろっていうの?じゃあ」


「お仕置きが怖くて言いだせないようじゃ、まだまだだってことだ」


「叱られても、歯食いしばって、全部自分のものにする位の貪欲さを持て」


「そんな事できないよ」


「できない?できると言うまで膝の上から下ろさないからな」


できない。できない。痛い。痛いよ。


「やってもいないのに、できないなんて許さないからな」


「返事!」


ひー。もう痛いのだけで、我慢するだけで精一杯なのに。


「頑張ります。これからも指導してください」


あ・・・私うっかりなんてことを。指導っていうのは、レッスンの事だって思ってくれるかな?


「お仕置きの指導か?」


やっぱり!すかさず上げ足取るから嫌い。


違うけど、違うって言ったらもっと叱られるかな?


「お稽古の方です!」


「ああ。お仕置きのお稽古な。手が痛いから、程程にしてくれよ」



「しない。お仕置きしない」


「反省しないと、いつまでも膝の上だぞ」


もうやだー。

痛い。十分反省した〜



「ごめんなさい。反省してます」


パチン パチン 


???なんで?


「直紀さんに相談して、真面目にお稽古します」


「よし」


バチン!といったい一打が降って来たけど、終わった~~~


マジで痛かった。涙が出た。


ものすっごい怖かった。体が大切だから、怪我でもしたらどうするんだって、それからお尻冷やしながら

ずーっとお説教だった。


でも、でも、大切に気にかけてもらているの?と

ちょっと嬉しかった。


みていてくれる人がいる。


応援してくれる人がいる。


自分が頑張れば、周りが応援してくれる。


それなのに、いつの間にか、私は一人で何でもやってる気になっていた。


そんな事じゃ、舞台だって上手く回らない。


変わろう。


自分が変わろう。


そして、大きな舞台に立てるように、厳しいお稽古だって頑張る。



「目に力が戻った」


そういってとびっきりの笑顔を見せてくれた。


直紀さんは何でも、何でもわかっていて、私が自分で答えを見つけられるように、時間を与えてくれて

導いてくれる。


一生ついて行きたい師匠だと改めて尊敬する。