道10

2013/07/01

役に立ちたい

 

どうしたら、一人前として見てもらえるんだろう。

 

ふとした拍子に不安になる。

 

直紀さんは、一流の人を相手にしている。だから私なんてまだまだ素人に毛が生えたレベルで

対等に診てもらうなんて夢のまた夢。

 

それなのに、代役で突然でた舞台で、評価もらって、踊りはそこそこの「役者」というのが

なんとなくの私の肩書。

「彩花ちゃん、器用だから助かるよ。他の役者さんとも上手く合わせてくれるしさ」

 

”そこそこ”

 

それが私の評価。

 

直紀さんは一流で、私は、そこそこ・・・。

 

はあ。毎日、踊りが上手くなるようにと5時起きは続いているものの、

なんだかなー。私って、なんだろう。

 

元の、直紀さんの演出見ている生活の方がいいなあ。

でも存在意義がないといつまでも居座るっていう訳にもいかないし。

 

ぐるぐる、考え事してたら、怪我するね。駄目だ。

顔洗って来ようって、ふと振り返ったら、険しい様子で見てる人が立ってた。

 

「ちょっと話しようか」

 

「はい」

 

なんか、いつもと違う。

 

怒ってる?

 

「考え事しながら、体を動かすのはやめなさい」

「いい?」

 

「はい」

 

「約束だよ」

 

「はい」

 

「今日は、もう続きはしなくていい」

 

「膝においで」

 

「え。やだ。だって、だって・・・」

 

(心構えが、できてません)

 

「言いわけするの?」

「なに?」

 

「なんでもないです」

 

「人と比較じゃなくて、自分が出来る事積み重ねたら、それが彩花の魅力に自然となるとおもうんだけどな」

「そこが好きな人もいるだろうし、興味の無い人もいるだろう」

 

「自分がぶれたら、自分自身がわからなくなるよ」

 

「わかる?」

 

「なんとなく・・・は、わかります」

 

「彩花が目指しているのは何?」

 

直紀さんに認めてもらいたい。それだけなんだけど、それ言ったら雷落ちるのわかってるしな。

 

「彩花、もし、俺が認めないって言ったら、全否定されたお前はどうする?」

 

あ・・・

 

「誰が自分の事、大事にできるか考えてご覧?俺はしょせん他人なんだよ。自分の事は一番、自分が大事におもわなかったら、空虚になるだけだ」

 

「そりゃ、外から影響受けない人はいない」

 

「彩花の悩みもわかる。でも、自分が輝けるチャンスを自己否定でつぶすのはもったいないんじゃないかな」

 

なんで・・・。

 

なんでわかるの?

 

 

「言わなかったけど、才能はあると思ってる。だから遊びじゃなくてきちんと稽古も、態度も見てきた」

「途中でやめるのは、彩花の自由だし、今は調子がよくても、そこから例えば、頑張っても、

欲しいチャンスはつかめないかもしれない」

「未来は分からないんだよ」

 

「自分がいる、今しか、自分の未来は作れない」

 

「難しすぎて、わからない」

 

「わかろうとしなくていい」

 

「自分を大事にする。それだけ気にかけてれば、大丈夫」

 

「さ、いい加減なストレッチの罰はキチンとしような」

 

「えええええ」

 

「えー。じゃない」

 

そういって、ビシビシお尻を叩かれた。

本当は、認めてくれてる?

 

こんな、ひよっこで、何かの役に立つ訳じゃないのに?

なんで?

 

なんで、褒めてもらったのかも分からない。

 

「俺は頑張ってる姿はきちんと評価する」

 

「彩花が意図する未来はなんだろうな?」

 

そんな、カッコいい事言いながら、平気でお尻強く叩けるのってどういう事?

痛い。

 

痛い。痛い。

 

ぐいっと回された手でしっかりと腰の辺りを押さえられて、

悲しい位に、痛さが押し寄せて来る。

 

そもそも、逃げようとしたり、手でお尻隠そうとしようものなら、

お仕置きが酷くなるのは、十分にわかってるから、大人しく、じっと我慢な訳だけと、

 

それにしても辛い・・・。

 

 

ようやく、膝から下ろして、お尻冷やしてもらっている間は、

いつものようにお尻がジンジンしてる。

 

 

 

「いつか、直紀さんに私がでる舞台の演出してもらいたい」

 

勇気を振り絞って呟く。

 

「ははっ」

 

「大きくでたな」

 

何言っちゃったんだろう・・・。恥ずかしい。と思ったら、

そっと頭に手をのせて、「いつかな」といってくれた。