道29
2020/12/29
駅の階段で踏み外して、左足首を軽くひねった。
マスクしてると視界が狭まるというか、人が近くに寄ってきてる距離感の佐察知能力がにぶるんだよね。
急に人が現れたように見えて、よけきれずによろけて痛めてしまった。
まあ舞台も無いから、お稽古もないので支障は無いけど
直紀さんがプライベートで特別にお稽古つけてくれてるからね。
それには影響でないように、足首冷やして調整して参加したのに、
なんか微妙に痛い。
「彩花、どこか調子悪いのか?」
「どこも悪くないです」
「まっすぐ立って」
「片足上げて」
「もう片方」
「左側どこか、痛めたか?今か?」
「今じゃないです」「昨日、左足首を少しひねってしまって」
真っすぐ立てたと思ったのに。
「テーピングして参加してるんだろうな?」
「ちょっと見せろ」
「大丈夫なんで」
ものすごい無言で睨まれて、腕を組まれた。
怖い。
「はい。お願いします」
座って足首を出す。
「痛いか?」 そっと伸ばされるとやっぱり痛い。
「少し」
「これは?」
「痛いです」
「痛めてるのが分からないようにやるにしても医者に行ってからにしてくれ」
「そして、俺には痛めてるのを言えないような関係なのかな?」
「違います」
「ならなぜ言わない?」
「お稽古したかったから」
「体それで悪くしたらどうするんだ」
「後で医者行ってこい。これは命令だから」
「はい」
「帰ってきたらお仕置きだから」
「はい」
わーん。やだやだ。お仕置きやだ。すぐお仕置きっていうんだよ。この人。
「お前は今日はこれで終わり」
「はい」
「そばで見ててもいいですか?」
「氷持ってきて冷やすのが先だ。冷やしながら見てるのはかまわない」
ちらって顔見たらそんなに怒ってないようにも見えたけど。どうだろう。
「ありがとうございます」
***
「湿布出してもらった」
「それで?」
「激しい運動は控えるようにって言われました」
「膝においで」
え?もう?
膝に乗った姿勢でも足に負担はかかると思うんだけど。
「ずっと直紀さんの元で勉強してたいから、お休みしたくなかったから」
「学ぶ気があるのなら、見る事も大事だ」
一蹴された。
「はい」
「自分の体をケアできないのは言語道断」
「はい」
「足が痛いのなら、数は大目にみてやる」
「痛いです」
ふっ。素直だな。
「膝に乗れ」
「彩花?返事は?」
「はい」
「20回な」
20回も。絶対に痛いよ。
『はい』と言ってもなかなか乗らないのな。どうしてそんなに稽古優先にするんだ?まったく酷い頑固さだな。
「あれか?俺が稽古つけるから、自分の体をおろそかにしてまで参加しようとするのなら、稽古をやめるか」
「止めないです。それは絶対にいや」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。素直に不調の時は事前に相談するし、無理はしないから」
「約束する。ごめんなさい」
「直紀さんごめんなさい」
「お仕置きするから膝に乗りなさい」
「はい」
最悪。
最悪過ぎて気分が悪い。階段、なんで踏み外したんだろ。あの人が急に目の前に現れなかったら
踏み外したりしなかったかもしれないし、そうしたらこんな事にならなかったかもしれない。
「反省してる?」
「してます」
「何反省したのか言ってみろ」
「え?あ。っと」
パチン!!
「や。やだ。ちょっと他の事に気を取られてて」
「他の事だ?お仕置きだといわれて他の事考えるとはずいぶん余裕だな」
「あ?ちがっ。や。痛い。痛い。痛い。まだ叩かれる準備出来てない」
「準備なんて関係ない」
「無理。や。痛い。痛すぎる。ごめんなさい。反省してる」
「何反省しているか言ってみろ」
「手、手を止めてくれたら言えるから」
「やああああ。止めてって言ったのに」
鬼。鬼。おにーーー。
「ごめんなさい。他の事考えてごめんなさい」
「ごめんなさいって言ってるのにーー」
「強情だな。彩花の指図は受けない。反省の内容言えるまで終わらないからな」
「だから、直紀さんに隠し事しない。体調悪かったら先に言うから。反省してるから」
「『だから』は余計だ」
・・・
「『鬼』もよけいだ」
地獄耳。ぞっとする。
何回か追加されて、立たされた。
「足首は痛い?」
「お尻の方が痛いです」
「なら、あと20で終わりにする」
「もう一度膝に乗れ」
「いち」
ひいいいい。痛い。痛いよう。
「にい」
「さん」
もうやだ。もう無理。なのに、4,5、と一定の速度で容赦ない。
「直紀さん、ギブアップー」
「なんだ。つけにしておくか?利子は高いぞ」
「終わりに、終わりにして」
「いち」
「やあああああ」
「や。やあ。10だもん」「や、やだ。やだ」
「最初からなんて、やだーーー」
「痛い」
「痛い」
無言で叩けれてるんですけどーーー。怖いよーーーー。
「い、今いくつ?」
「さあな」
もう無理。やったら怒られるの承知で手でお尻を隠す。
「手をどけなさい」
「彩花。今すぐその手をどけなさい」
「お尻痛い。いっぱい叩くなんて酷い。聞いてない」
「に、20っていったのに。約束と違う」
「反抗しつづけるのならお仕置きは厳しくする」
「言う事聞くから。もう反抗しないから」
「ごめんなさい」
「反省したのか?」
「した。しました」
「あといくつ?」
・・・・
むり
無理だから。もう無理だから。
「言わないのなら、言えるまで叩くか?」
「20」
「よし、じゃあ、20我慢な」
あれ?多くいっちゃったのかな?もしかして20じゃなくてもよかったんじゃないのかな?
それからは一応、ぎゃーぎゃー言っても数は流石に増えなかったかれど、
きつかった。20やっと終わって解放された。
どんだけドSなんだ。
「お尻と足首、自分でちゃんとケアしておけよ」
「明日はそれと、見学」
口を開こうとしたら「いいな?」と駄目押し。
「はい」
「明日またよろしくお願いします」
すごすごと退散。
もう。いいことないなー。と思っていたら、直紀さんがお医者さんに何言われたか
詳しく話すようにといって、話を聞いてきてくれた。
見ただけで分かっちゃう位にすごい人なのに、それわかってて、何で隠せると思ったんだろう。私。
そもそも、そこがアホだったな。
早く良くなるといいな。
早く一緒に踊りたい。
直紀さん、流石だなー。顔合わせ辛いけど、叱った後は引きづらない人だしと思って
翌朝スタジオで待っていたら、
足首に負担がかからない、罰のような鬼の筋トレメニューが用意されてた。
これって、お仕置きだよね?ある意味。
自主練メニューみて茫然としていると、おひさまスマイルで頭撫でてくれた。
そういう所だぞ。皆に結局のところはドSなんだよってて影で言われてるのは、そういう所だぞーーー。
~蓮の花~