道18

私の師匠は直紀さんしかいない。

 

だけど、他の人のレッスンを受けてみたくて、こっそり参加したら美穂さんがいた。

 

「彩香ちゃん!」

 

「み、美穂さん、お願い!」

「私がこのレッスンに参加したの直紀さんに言わないで」

 

「話はあと。折角のレッスンだからまずは楽しもう」

 

レッスン中はこっそり参加したのがバレタ事への不安など忘れ、夢中になって踊った。

有名な外人のダンサーが来日の度に行っていて、希望者はだれでも参加できる公開レッスン。

金銭的な事から1日しか私は受けられなかったけれど、

それはそれは、楽しく、体が悲鳴を上げそうなハードさであっても、受けて良かったと思う内容だった。

 

更衣室でて、そそくさと帰ろうとしたら美穂さんにお茶しようと呼びとめられた。

 

「直紀さん以外に習うなんてしちゃいけない身分かと思って、こっそり受けたから・・・」

 

私の理屈は変だと言われたけれど、そう思っていたから。

 

「直紀が参加反対すると思ったの?」

 

「まさか、直紀さんはそんな事言う人じゃないです」

 

「それ分かってるのに、変だよ。彩香ちゃん」

 

「そうだけど。そうだけど。なんか悪いような気がして」

 

 

「帰ったら自分で今日の事、直紀に報告する事」

「約束できる?」

 

「美穂さん、それは許して」

 

「だーめ。ちゃんと自分でいいなさい」

 

美穂さん、姉御肌でいつも私の味方で、私の話聞いてくれるひとなのに。

ねばったけど、駄目だった。

 

家帰って

 

夜になって

 

次に日になっても直紀さんには言えないまま数日が過ぎて。

仕舞には、美穂さんともなんだか話しづらい気分でいたら、美穂さんの方から声かけてくれた。

声かけてもらったのはありがたいのだけど、やっぱり、そうだよね。聞いて来るよねという展開。

 

「彩花ちゃん、ちゃんと言ったの?」

 

「言ってないです」

 

「なんでーーー!」

「まだ言って無いの!!!」

 

「や、美穂さん、声大きい」

 

皆振り返ったし・・・

 

「彩花~なんかやったのか?」

 

・・・直紀さん、地獄耳。

ていうか、地獄耳じゃ無くても全員聞こえてるレベルだったけど。

 

「美穂さん~~」

 

「自分でいいなさい。私が言ったらもっと叱られるでしょ」

そう小声でささやいて、ガンバレと口パク応援。

 

美穂さん、絶対分かってやってる・・・・

 

「彩香!」

 

「ハイ!!」

 

直紀さんの側に小走りで行って、家に帰ったら話すと約束して、『レッスン中気を抜いたら許さないからな』と

注意された。

 

とほほだよ。

 

で、事の顛末を正座をさせられて一から順に報告。

 

「何で言わない?」

 

「直紀さん以外の人に習うのは失礼かと思って」

 

 

「基礎が出来ている今なら色んな人の振り付けに触れる機会が多い方がいい」

 

「美穂との約束守らなかった事。黙ってレッスンに言った事。相談しなかった事」

 

「この中に、悪い事してないとい言える事はあるかな?」

 

もしおかして、お仕置き・・・。

そして、言いわけしようとしたらきっと追加されるか、もっとお説教されるかもしれない。

 

 

「無いです。すみませんでした」

 

「美穂があそこまでしてくれたんだから、お仕置きは軽くしておいてやる」

 

「え!ホント!」

 

 

「やっぱりやめた。その甘えた態度が気に入らない」

「むしろ、厳しくする事にした」

 

やだ。マジで嬉しかったのに。

私がどれ位悪いと思ってるか、試された・・・。引っ掛かったばかりに、ダメージ大きいんですけど。

 

バカバカ。直紀さんのバカ。意地悪。

 

鬼。

 

酷いよ。お仕置きするなんて大嫌い。

 

「膝に来なさい」

 

そして容赦なく事は進む。たかがこれ位の事・・・。なのに。お仕置きする?

 

門限だって守ってるのに。

なんでお仕置きなの?

 

スカートをまくられ、パンツを下ろされ、不満たらたらでまだ心構えできて無いのに。

全然お仕置き受ける気無いのに。

 

「や、痛い。直紀さん、痛い」

 

「お尻痛い。やだ。やだ」

 

「反省する気が無いみたいだからな、お尻の赤さはサルとどっちが赤くなるかな」

 

「やだ。赤くなるのやだ」

 

「誰が悪いんだ?」

 

私が返事をしないものだから、黙ってビシビシと叩いてくる。

痛い。本当に痛いのに。

痛いって言ってるのに。

 

酷い。

直紀さん酷い。

 

痛い。痛い。痛い。痛い。

 

気を使って何が悪いの。私悪く無いもん。

 

「いたいーーー」

 

痛い痛い。痛いって言ってるのに。

 

「相談しろって何時も言ってるだろ」

 

「自分で勝手に思い込んで、突っ走って、後ろめたい思いでレッスン受けて怪我でもしたらどうするんだ」

 

あ・・・。

 

「美穂だって心配するだろう?」

 

「あえてお前の口から言えるようにしてくれたんだろう?」

 

私、私・・・。

 

「誰が悪いんだ?」

 

「俺か?美穂か?」

 

ち、違う。

私。私が勝手に突っ走って、勝手に・・・。

 

「誰が悪いか言えるまで終わらないからな」

 

そういってお尻の下の方無言で叩かれて、痛くてそれでも言わずに頑固に

むくれていたら、お尻の下の方ばかり強く叩かれて、流石に根をあげた。

 

「言う。言います」

 

一瞬を止めてくれた。

でも、今更言えない。やだ。言えないよ。

 

「痛い!痛い。直紀さん痛い!!!」

 

黙っていたら、お尻に痛いのが降ってきた

 「彩香。彩香が悪かったです」

 

「相談しなくてごめんなさい。美穂さんにも迷惑かけてごめんなさい」

 

「やっとごめんなさいか?まったく」

 

そういってグイッと足を組んだってことは・・・

 

「反省したみたいだから、少し痛いが我慢しろ。悪さの分お仕置きする」

 

「やあああああ」

「痛い。痛い。さっきより痛いの。無理。無理です。ごめんなさい。ごめんなさい」

 

「直紀さんにちゃんと何でも相談します」

 

「本当です」

「や、痛い」「無理」

 

「ちゃんと何でも話すんだな?」

 

「話します」

 

私は、あまりの痛さに、自分の首絞める約束してた・・・。

 

「お仕置きが怖くてもちゃんと自分から報告するんだな?」

 

「します」「します!します!」

 

「よし」

 

 

手が止まった。マジ痛い。超ぐったり。お尻がズキズキしてる。
痛いところばかり狙って叩いて来るんだもん。

本当に厳しい。

 

「反省したようだから、10回ちゃんと我慢しろ」

 

うそ・・・と心の中で呟いた瞬間に、腰を上から直紀さんの腕でグイって引き寄せられてがっちりホールド。

 

と思った瞬間振ってきた。

 

右のお尻の下の方に、手がバチンと当たって、飛び上がる痛さ。

 

「いたーい」

 

「我慢しろ」

 

ぐっと我慢したら、もう一回右って、本当に鬼だとおもう。

 

やだ。10回もやだ。無理・・・

 

「ガキは変な気遣いしないで、何でも報告しろ。それから相談もだ」

 

「わかったか?」

 

余の痛さにムカついて、答えたく無かったけど、渋々「わかりました」と答えた

 

 

約束したので、ようやく膝から下ろしてもらえた。

お尻を冷やしながら、お説教。

 

痛い。痛すぎ。怖かったよー。

 

「行くなら、前もって心構えとか教えられるだろうに」

「全く無鉄砲だな」

「だいたい、あの場に俺がいたら、どうしたんだろうな?そそくさと逃げ出したのか?」

 

からかわれて、恥ずかしくって。

でも、そうかそういう可能性だってあったのかと思って、

ぞっとした。

 

「俺に気を使うなんて100年早い」

 

と言われてキュンと来た。だって、頭をふわって撫でられたから。

 

痛くって、どんどんズキズキしてくるお尻。

冷やしても、冷やしても、痛さは消えない。

私の向う見ずの代償か・・・。

 

嬉しかったけど、恥ずかしくもあって。

 

「お尻痛いです」

 

「当たり前だ」

 

ちょっと不満ぶつけたら、そっけない答え。

よかった。嫌われてない。

 

「美穂にちゃんとあやまっておけ。美穂との約束守らなかったんだからな」

 

「はい。明日謝ります」

 

「人との約束守れない子もお仕置きだったな」

 

え?

 

こんなにお仕置きしておいて、約束守らないお仕置きを、まさか今からする訳ではないよね?

 

まさか、まさか。

 

「そろそろいいだろ」

そう言って、冷やしてくれていたタオルをどける。

 

やだ。やだ。だって、もう終わり・・・。

痛かったの我慢したんだから、これ以上やだ。

 

 

「膝に来なさい」

 

 

もう、もう・・・。ヒドイ。

 

「今回だけでいいから、お仕置きもう無理だから、だからもうしないで」

 

必至に身を固くしてソファーの上で、お尻の痛さに思わず手でお尻を隠す。

 

「彩花?」

 

落ち着いた声。

 

・・・・・

 

「名前呼んだの聞こえたね?彩花返事は?」

 

怒っている風には聞こえない声で、返事を催促される。

 

「ハイ」

 

「この世界、礼儀を忘れたら関係性を維持するのが難しい」

「今回は美穂だったから見逃して欲しいのか?それとも、今回はお尻が痛いから見逃して欲しいのか?」

 

・・・・

 

返す言葉もない。

 

「中途半端に終わる様な事、今まで俺がした事あったか?」

 

「ないです・・・」

 

「無いのにそう言ったのは何でだろうな?」

 

「これからも、俺から学ぶつもりなら、こういう事を見逃したりしない事もしっかり覚えておけ」

 

「はい」

 

「すみませんでした」

 

私の甘えていた気持ちは全部見抜かれていた。

 

 

 

 

なんだ、そうか。

 

思いあがっていたんだ。私。

駆け出しで、ひよっこで、まだまだ学ぶこと沢山あるレベルなのに。

ちょっと舞台でて、天狗になっていたんだ。まだまだ沢山相談する事あるのに、
いっちょまえに判断できると思いあがっていた。

恥ずかしい。

美穂さんが言った事が分かった。

『迷っている事も含めて、直紀にちゃんと相談しなさい』って。そう言われた事の意味が。

 

私の周りには素敵な大人が沢山いてくれてる。

 

ありがたいな。

 

お仕置きか・・・と直紀さんのほうみたら、

膝をポンポンって。

 

やだ。やっぱり・・・。

 

「不満そうな顔見せるなら、追加だな」

 

やだ。やっぱり容赦無い。

 

お仕置きは嫌い。嫌いです。

 

 

「すぐに来ないともっと追加にするぞ」

 

ぐずぐずしていたら脅し。

 

脅しだけならまだしも、本当に追加されるのはたまらないから

そそくさと膝の上に乗った。

 

「手がかかるうちは、お尻にお仕置き」

 

嫌がってる私の先を越すような言葉で、お仕置きは再会された。

 

 

良く美穂さんにお詫びしたら、

「直紀、厳しく無かった?大丈夫?」

「優しくしてねと言っておいたんだけど」

 

美穂さん、優しい。

 

有難い。

 

「叱られました」

 

 

美穂さんは、笑顔で「そっかそっか」といって今度飲みに行こうと言ってくれた。