道30
2021/1/19
昨日のお仕置きでお尻が痛い。
そしてドSな直紀さん趣味らしい筋トレメニューのせいでヘロヘロ。
久しぶりにちょっと誰かに泣きつきたい気分。足首動かせないからと言って、
メニューはキツイし、直紀さんが非情なオニだってことを泣きつきたい。
最近直紀さん以外に人と会う機会無くて、人恋しかったし、
自分が悪かったって事はわかってるけど、ちょっと愚痴を言いたかった。
聞いてもらいたかった。誰かに。
あ、でも、愚痴っていうか、本当は直紀さんがちゃんと見ててくれて、大切にケアしてもらってるという事を
分かってる人とでないとダメだから、相手は自ずと厳選される。
美穂さんか、吉沢さんか、どっちか連絡つくかな。。。
思い切って連絡したら、『今ちょっと無理なんだけど、夜にオンライン飲みしよっか?』と美穂さんから速攻返事が来た。
美穂さんとオンライン飲み!やってみたかった!!
『お前はウーロン茶』の厳命受けてるけど、家ならいいよね。
コンビニであとでちょっと調達してこよう。
美穂さんと二人で飲み会!俄然楽しくなってきた。
で、美穂さんにたくさんお尻叩かれて泣きそうになって、それから鬼メニューの筋トレ指示されて、
頑張って筋トレした話をして、
他にもたわいない事話して、なんだかすごく楽しい気持ちのまま眠りについた。
部屋に置く小型の冷蔵庫があってよかったー。こっそりとプシュと缶をあけるのがたまらない背徳感。
あとはこの缶をうまく捨てるのみ。今はコンビニにもマイバッグ持っていくからうまく隠せるはず。
本当は直紀さんがいない時に捨てたいけれど、ずっと家にいるからね。
そおおおっと。でも何気ない感じで家を出なくては。
いつまでも証拠を部屋に隠し持ってるのは、気が気じゃないから、すぐ捨てに行きたい。
「ちょっとコンビニに行ってくる」
「彩花、袋が濡れてるぞ」
「何入ってるんだ?」
硬直
まじで?
「あ。大丈夫。大丈夫。行ってきます」
「ちょとまて。回れ右」
ヤバイ。
絶対にやばい。
「あわててるのは何でだ?」
「もう行かないと」
「行き先はコンビニだろ。急ぐ必要があると思えないが」
「顔をあげる」
完全にアウト。もうダメだ。なんて返事したらよいのか分からない。
「えっと。袋は洗濯すれば大丈夫なので」
「そうか」
あ。見逃してくれた?
じっと顔見られてる。怖い。。
続きは?ってことかな。どうしよう。袋の中身は見せられない。飲み終わった缶が入ってる。どうしよう。
目が泳ぎまくってしまう。
「隠し事して叱られたばかりだと思ったが、なんか知らないが膝に乗る感じか?」
これは、かなりクロだと思われてる気がする。
「いえ。ダイジョブデス」
何が大丈夫なの私。駄目だ。絶対感づかれてる。
私が悪さした時には鼻が利くんだもん。
「彩花?態度が悪いと俺から怒られないうちに自分で話せ」
ごくっ
息を思わずのんじゃった。
隠しとおせる訳ない。
「昨日の夜、美穂さんにオンライン飲みってのをしてもらって」
「その時飲んだ缶が入ってて、缶を捨てようと思って・・・だから、缶捨てついでに、コンビニに行ってきます」
ああ。何回缶捨てるって言ってるんだ。私。自分の口が勝手に、後ろめたさを露呈してる。
でもまだ怖くてお酒飲んだって言えない。
「この期に及んで質問したことには答えないわけだな」
顎つかまれた。顔を向けろってことだよね。目を見て答えなさいっていう事だよね。うんうん。顎つかまれなくてもできます。
「お仕置きが足りてないとは思ってないんだが、認識が違ってたみたいなので厳しくするか?」
恐怖の『厳しく』ワードが聞こえた気がする・・・
「や。だって、直紀さんはいつも厳しいです」
顎から手は放してくれたけど、尋問は続く。
「口答えと隠し事ばかりする子はこの家にはいらないんだけどな」
「ごめんなさい。ごめんなさい。お仕置き痛いの怖くて、正直に言えなかっただけで」
目が泳いでしまう。数増えちゃう。厳しくなっちゃう。
「理由になってない」
ばっさり切り捨てられた・・・その通りだけど、理屈じゃないし。
ひえ。もう本当に怖い。
怖いしかない。顔上げるのも無理。
そもそも、おとといのお仕置きが、死ぬほど痛かったんだから。痛すぎてもうお仕置きはこりごりなんだから。
「お前が悪さしてないか、いちいち気にしてるほど俺も暇じゃないから、そうだな。じゃあ自由にしたらいい」
えっ
「そ、それはどういう意味でしょうか」
「言葉通りだ。干渉しないという事だ」
「報告もいらないし、自由にしたらいい」
えっ。断固拒絶の姿勢で挑んでたら、え?見捨てられちゃうの?
「直紀さん、見捨てないで」
「行くところない」
「ここに住むならそれは好きにすればいい」
なんか、なんか、酷く悲しい。
や。違う。そうじゃなくて。
勿論、直紀さんが悪いわけじゃなくて、私が悪かっただけなのに、ちょっと突っかかってしまった。
反抗心で気持ちがいっぱいになって、むくむくと反抗の気持ちが膨れて、溢れかえってちょと悪さしてみようなんて軽く考えて。
叱られる事ばかりしてたのに、まだ隠し事して、グズグズ言って、ずーっと構ってもらおうとしてたんだ。
無意識であったとはいえ、駄目だよね。こんなの、直紀さんだって不快だよ。
面倒見切れないよね。そうだよね。直紀さんだって忙しいのに。
自分がいけないのに、なんか甘えて、依存してる私は最悪だ。
「ごめんなさい」
「行っていい」
「ちゃんとする」
「ちゃんとするから、見捨てないで」
「見捨てたりしないよ。大丈夫。干渉しないってだけだ」
それって、無視されてるのと一緒じゃん。無関心って愛情の反対言葉だもん。
どうしよう。
許してくれない。
・・・
どう話したらいいんだろう。
・・・
直紀さんなんか言ってくれたらいいのに。
・・・
彩花は、少しは反省したみたいだが、どうするかな。
だいたい、おせっかいの美穂を相手に選んだことがお前の敗因だな。
『今、飲み会おわったんだけどー』と速攻LINEしてきて、直紀がもっと優しくすべきだと散々言いたい放題言って勝手に
『じゃあ、彩花ちゃんにやさしくしてね」で終了してたからな。
あいつは飲みすぎだろ。
こんなご時世、それぞれ抑圧されてる事にふとストレスが溜まって爆発するのかもしれないが、
自分の思った通りにならない事は往々にしてあるわけで。
自分だけ被害者意識でいて欲しくないんだが、さてそれをどうやって教えるかだ。
「直紀さん、ごめんなさい。お酒飲んでいいか聞かないで、コッソリ飲んだ」
「そうだな」
「よし、行っていい」
「もうしない」
「それならよかった。酒は楽しむ為に飲む方がいいからな。ストレス発散の為に飲むのはお前には向かない」
「はい」
「人それぞれだが、酒は楽しい時だけにしとけ」
「はい」
「美穂さんとの飲み会はウーロン茶にします」
「好きにすればいい」
「そういっただろ?」
「だって、そんなの、急に見放されたみたいで、悲しい」
「自分の事は自分でちゃんとしろ。それだけだ」
「それはできるな?」
「できます」
めちゃめちゃ寂しい気持ちが襲ってきてる。お尻叩かれたわけでも、がっつりお説教されてるわけでもないのに、
凹む。
「自分で決めて、自分で動かないと、成長はしない」
「俺は伴走はできるが、お前の事を強制的にコントロールするつもりは無い。だから自分がやるといった事はちゃんとやれ」
「はい」
「すみませんでした」
「コンビニ行くんだろ、行っていいぞ」
「直紀さん、本当にごめんなさい。本当に本当に、反抗して、私バカだったから」
「悪い事したときは叱って欲しい。自分の事は自分でちゃんとするけど、ちょっとごまかしたくなって駄目な事したときは、叱って欲しい」
「それはまた奇特な」
「俺もワンコの躾はそろそろ卒業したいんだけどな」
痛いのやだけど、卒業はちょっと違う。
・・・
「まあ、家に置いておくうちは厳しく躾けるか。預かった責任だな」
えっ?あ。ちょっと気を取り直してくれたのかな。
「膝に乗るか、どうするかは自分で選べ」
えっと、それはどういう?師匠それは、急展開じゃないでしょうか。
「放置か、躾か、今後の選択を今しろ」
びくっ。言葉がきつい。
放置はされない代わりに、躾って。見放さないでと願った通りになろうとしてるけど、
それには、なくてもいいおまけがついてきてて困惑。
もともとバレたらお仕置されるような事を、お仕置きされないように、陰で反発、反抗して憂さ晴らししちゃおうという
軽い気持ちだった。
だから、だから、お仕置きは嫌。
もう昨日じゃないか、おとといか。あれで既にお尻が痛すぎるし、今叩かれたら、激痛なのは間違いない。
かといって、膝に乗らないと、放置・・・される。
この人、いった事は絶対にするもん。
知ってる。
頭では分かっていても、分かっていても、受け入れがたい。
まあ、面白いほど、顔にすぐ出るな。
本当に嫌そうだ。
いい加減最初から膝に乗る以外に選択肢無いの気が付いたらいいと思うが、そこがまあ、若いってことなのかもしれない。
結構きつめにお仕置きしたばかりなんだが、法則理解して、そこは素直にできないものなのか?
ぐずぐずすればするほど、厳しくするだけなんだが。
「はい」
そろりと近づく。
「直紀さん、ごめんなさい」
「お仕置き受ける?」
「はい」
本当は『やだーーー』と叫びたい気分だけど、ぐっとこらえて返事をする。
「じゃあ、膝においで」
「はい」
ふえーーん。マジで何でこうなるかなー。
おいでの声が優しい。
「少し痛くするけど、動かずに10我慢しなさい」
優しい声が続くけど、そんなのに騙されたら駄目だ。私。
少しという言葉がどれほど痛いという事なのか、体感してみるまでは分からないけれど、
恐怖をあおるには十分。
大嫌い。スカート捲られる瞬間も、パンツを下ろされる瞬間も。
嫌い。嫌い。
「動くんじゃないよ」
「いったーーー」
思わず立ち上がってしまった。
「動かずに我慢しなさいと言ったはずだ」
「もう一度」
オニ
「返事は?」
オニ~~
「はい」
「声が小さい」
「はい!!」
どこまでもオニだ。なんなの。なんなのーーー。
やり直し大嫌い。
「や。や。痛いのやだ」
ペチペチされて怖さで声がでる。
そんな私のビビリはお構いなしで、痛いのが降ってくる。
「いったーー」
「大人しくといったはずだ」
「もう一度」
そんな事いってないもん。。。
「返事」
「はい」
ぎゃ。痛いのが降ってきた。かろうじて我慢する。
や。やだ。もうやだ。
「いち」
ひえつ。まだ イチ? 噓でしょ。
「やあ。痛い。痛い」
「最初から」
「返事」
もちろん、そんなこんなで10回なんて始まる前は、あれ?数少なめだな?とおかしいなと思った通り、
10回で終わる訳が無いのはすぐにわかった。
何度ももう一度って言われて、その度に『イチ』ってリセットされるの何で?
酷くない?
流石のドSだよ。
途中からでいいじゃん。四を何度かやり直したらいいのに、なんで『イチ』っていうの?
わけわからない。
「痛い。ごめんなさい。声出さないのは無理」
「動かない」
「8」
全然かみ合わないやり取りして、なんとか数を伸ばすものの、数日前に叩かれた所にかぶせてきてて、
あまりの痛さに涙が出そうになる。
無理だもん。こんな痛いの。もうやだ。
「手をどけなさい」
「返事は?」
「はい」
だって無理なのに。返事はしたものの、手をどける勇気が無い。痛いのが怖い。
「動かないで我慢しなさいと言ったはずだ」
「違うか?」
「違わないです。すみません」
パチン
それでも手をどけなかったら、ぐいっと手をどかされれて、痛いのされた。
「イチ」
いち?イチなの??嘘でしょ。
「やああ。痛い。痛い。本当に痛い」
「自分で手をどけなかったからな」
「お仕置き受けるといったのは彩花だ」
でた、ドS。しれっとそういう事を言うんだよこの人は。
それは、そうだけど、こんな痛いとなると、体は反射的に拒絶しちゃう。
「10回我慢するのもできないのか?」
すでにその数超えてるし。少ない数で終わらせるつもりないの察知したもん。
「10回だけなら我慢できるけど、10回以上叩かれてる」
「彩花?口答えするのか?」
「誰が悪いんだ?」
「ん?」
口で勝てない相手にたてついたらどうなるか・・・。身をもって知ってるので黙るしかない。
「ごめんなさい」
「俺は誰が悪いのかと聞いたんだ」
軽くお尻叩かれる。
恐怖以外の何物でもない。
「彩花が悪いです」
「自ら反省したいと選んだんじゃないのか」
そう見えるけど、そうではない・・・。痛いのは嫌だ。
「そうです」
返事しなかったらもっと怒られる。これは学習ずみ。
「だったら大人しくお仕置き受けなさい」
「はい」
オニはそうやって絶対に私が選択したことだと言わせる。
逃げ道など探しようのない、絶望的的になる追い詰め方をして、言わせる。
「動くんじゃないぞ」
いやああああ。さっきより痛い。
「っ。痛い」
我慢しても声が漏れる。逃げ出したい。
「イチ」
でた。イチ。今日は何度も聞いてるし。
いや、いや。その下の方叩くの、本当に痛い。無理だから。やだ。もう無理。
お願い。お願いします。
終わりにして欲しい。
数は増えるけど、痛すぎて、本当に、どうしたらいいの?『我慢』って言われても、すごく辛い。
痛いよ。
お尻強く叩かれてる。もう真っ赤になってる。絶対赤くなってる。
なんか熱感じるもん。
腫れてると思う。
大嫌い。
こんなの。
お仕置き大嫌い。
やだやだ。
多分、少し動いてしまうのは大目に見てくれてるのはさっきとの違い。
腰に回した手でぐっと押さえてくれてる。
押さえてくれるという言い方は語弊があるけど、この際、藁にも縋る思い。
自分で体動かさないようにするのは、本当にきつくなってきてる。
数が増えないようにしてくれてるのかな。
そんな優しさより、力の加減を弱めて欲しい。
「9、10」
「よし終わり」
「立ってこっち向いて」
あまり痛くて、ヨロヨロしながら立つ。
「こっちを向きなさい」
「下を向くんじゃない」
「彩花が別に悪い事しなければ、お尻にお仕置きはしない」
「はい」
「なんでお仕置きされてるか自分で分かってるね?」
「はい」
「ごめんなさい」
「反省した?」
「十分反省しました」
お仕置きした人の顔みてこれ言わされるのって、はっきり言って苦痛以外の何物でもない。
怖さ倍増だし、何より恥ずかしい。
「自分でお尻冷やしておいた方がいいぞ。行ってよし」
ほっ。
追加されなかったよーーー。よかった。
はあ。痛かった。痛かった。痛かった。本当に痛かった。手でお尻をそっと触ってみた。熱い。下着も上げて、そそくさと部屋に戻る。
部屋着に着替えて、タオルを洗面所で濡らして、一人でケア。鏡でみたら、真っ赤だった。最悪だ。
本気の本気で怖かった。
見放されると思ったら、心臓がギューーーってなった。
この前も怖かったけど、今日は見捨てられちゃうかと思ったあの瞬間の精神的ダメージ半端なかった。
数増やして何度もやるのが直紀さんのブームなのかな。最初言われた数が少なくて期待しちゃう分、嫌。
それなら数を言われない方がいいかも。
あんなに痛くて、あんなに嫌だったのに、不思議な事に訳も分からない、やり場のないイライラというか反抗心は消えてた。
私が悪いんだよなーってぼんやり思ってるなんて、恐るべし。
自分で決めなさいっていつも言ってくれる。
嫌な事も含めだけど。
でも、直紀さんが言ったからじゃなくて、自分で決めた事だと、ちゃんと頑張ろうと思えるのかも。
直紀さんが言ってる躾ってそういう事なのかなあ。
お尻冷やしてちょっと気持ち落ち着いたら、もう一度ちゃんと謝ろうかな。
タオルをもう一度冷やしに行って来よう。そっと立ち上がる。
そうだ。バッグも洗わないと。
ん? あれ? 缶入れてた袋は濡れてない。渇いちゃったのかな?
とりあえず洗っておこう。でも、どこが濡れてたんだろう・・・。
直紀さんの事、
振り付け師としても、ダンサーとしても、そしてその人間性を尊敬してる。
居られる限り、そばでその姿勢を見続けたい。学び続けたい。
***
美穂に連絡を入れた。
こっそり彩花が酒飲んだことは、アドバイス通り厳しくお仕置きしておいた。と。
直ぐに、返信が山のように来てる通知が来るが、これは放置。
『優しく』は他の人がすればいい。
そして彩花がここに居たいのなら、しばらく置いておくだけだ。
人に対して、何かが出来るなんて思うのは、思い上がりだと思っている。
その人が生きたい人生を選択して生きればいい。
誰かと関わった時に、どのように受け取るのかは本人次第で
稀有な奇跡として、受け取った側から、感情の共有がされる事があるだけだ。
その人なりの考えがあっていい。
受け取り方があっていい。
俺ができるのは自分が自分であるという事に正直であるだけだ。
そして、自分が弱い人間だという事を認識しているだけだ。
吉沢が何と言おうと、だから
俺は叱ってばかりで、ちっとも人情味の厚い人間ではない。
~蓮の花~