道24

2018/4/29

自分の事となると、まるっきりやる気がしない。

 

あんなに踊りたいと思っていたのに。

今も踊ることは好きだけれど、

振り返ってみると、思うように踊れた事なんて、今まであったかな。って考えてしまう。

 

舞台に立てたことはたまたまラッキーだったからなのかもしれない。

踊る事に対して自信が無くなってて、気持ちが後ろ向きになってしまう。

 

だから、次のオーディションを受けるのも怖い。

通らないんじゃないか。

通らなかったらどうしよう。そう思うと、臆病風に吹かれて、今はいいや。次の時にしようと思ってしまう。

何をしたらオーディションに通るのかも分からない。

なんだかどうしたいのかも、分からない。

 

できない。無理。

そんな言葉が頭の中を常に巡る。

 

「明日締め切りでしょ?応募したの?」

ふとレッスンの合間の休憩中に美穂さんに聞かれた。

 

「ううん。今回は応募しない」

 

「なんで!彩花ちゃんチャレンジしたらいいのに。なんかあった?」

 

「何もないけど、向いてるかどうか分からないし」

 

「どうしたの?彩花ちゃん。ずっと元気ないけど、どんどんチャレンジした方がいいと思うよ」

 

「彩花ちゃんなら、きっとチャンスあると思う」

 

「ね?」と言って、うつむく私にそっと肩に手をかけて励ましてくれる美穂さん。

本当にいつも優しく私の事気にかけてくれてる。

でも、今は無理なんだ。ごめんなさい。美穂さん。

もしかしたらまた起こる、落ちるという痛みを味わいたくない。

安全な貝の中に閉じこもっていたい。

 

「これ、彩花ちゃん挑戦したらいいよね?ねえ?直紀もそう思うでしょ?」

 

えっ。

 

思わず顔を上げたら、まっすぐに私を見る直紀さんがそこにいた。

 

「彩花がやる気がないのなら、勧める必要はない」

 

一番、聞かれたくない人に会話を聞かれた上に、その返事があまりに真っ当で硬直した。

 

怒っている訳でも、あきれてる訳でもないと思う。

いつの通りの口調でさらりと秘孔を突かれた。

 

「そりゃ、一理あるけど、彩花ちゃんはまだ若いし、もうちょっと直紀だって背中押してあげたっていいじゃない」

 

「人に勧められてしぶしぶ行って通るようなオーディションなのか?」

 

ハラハラと涙がこぼれてた。

泣くなんて。って思うのに、涙が自然と溢れる。

 

「彩花ちゃん、ごめん。泣かすつもりなかったんだけど」

 

「み、美穂さんのせいじゃないです」

 

「直紀、泣かすことないじゃない」

 

「彩花、俺が泣かせたのか?」

 

「直紀!もうデリカシーがない!」

 

 

 

淡々とした口調。もうやだ。この場から立ち去りたい。

 

「彩花?」

 

「違います」

 

「自分が情けなくて、涙は見せたくないけど、だけど、と、止まらないです」

 

えーん。もうだめ。ティッシュで目頭あわてて押さえて下を向く。

見られたくない。こんなところ。

皆がいるところで泣くつもりなんてなかったのに。

 

「情けなくて泣く位なら今からさっさと荷物まとめて、実家に帰れ」

 

「ちょっと、直紀!」

 

「彩花ちゃんを追い詰める事ないでしょ」

 

「彩花ちゃん、今日はうちにおいで。直紀、そういうことだから。明日朝、彩花ちゃんは送っていくから」

 

「・・・」

 

涙止めるので精いっぱいで、言葉を発することが出来なかった。

 

「彩花、自分で選択しろ」

 

そういって、ペットボトル掴んで、直紀さんは鏡の前に戻っていった。

 

「彩花ちゃん、本当に、泣かすつもりじゃなかったんだけど。ごめんね」

 

「美穂さんのせいじゃないです。自分が悪いのわかってるんだけど、だけど」

 

「うん。うん。わかるよ。とにかく、今日はうちにおいで」

 

「はい」

 

美穂さんの家に行っても解決にはならないかもしれない。

だけど、荷物まとめろと言われて、どう返事していいのか、言葉が出てこない私には美穂さんの提案は救いだった。

 

+++++++++++++++

 

彩花が数回オーディションに落ちてから、自信を無くしてるのは分かっていた。

この前の舞台を見たいと無茶なチケット取りをしたこともあって、踊りへの情熱は消えていないのかとも思ったが、

自分が踊るという事に迷ったまま、そろそろ半年だからな。

 

俺が偉そうに言える立場でもないけれど、明日、帰ってきたら少し説教するか。

美穂にはいつも助けてもらってるな。

 

優しくフォローしてくれるやつがいるから俺が厳しくしても彩花が頑張れるのかもしれないな。

かといって、礼なんぞ言ったら、おごれと言われるか、下手すると、死ぬまで恩に着せるだろうから言わないが。

 

+++++++++++++++

 

美穂さんの家で、美穂さんが作ってくれたご飯食べながらたわいもない話をした。

 

お互い、今日の事には触れる事が無かったけれど、どこか言葉にせずとも今日の事を心の底には

抱えながら、表面上はいつも通り明るく振舞った。

 

朝、美穂さんが、「彩花ちゃん、もう少し頑張ろうと思うのなら、直紀にちゃんと謝ろうね」

と言ってくれた。

 

「はい。私もそう思ってました。泊めてくださってありがとうございます。あのまま帰ったら荷物まとめさせられてました」

 

美穂さんとは笑って別れたけれど、

気が重い。

 

家に近づくたびに、本当の所、どうしていいのか自分でもわからないから、

気持ちを込めて「頑張ります」と宣言できるか自信が無かった。

 

送っていくという美穂さんに、自分一人で帰りますと断った。自分が頑張らないといけない事だからと。

 

直紀さんは、中途半端な事したらすぐ見破るから。

そうしたら本当に実家に帰されてしまう。

皆の前で泣いた事も恥ずかしくて。

とにかく実家に帰るのは嫌だ。嫌だとぐるぐると解決策もないまま考えて歩いていたら、家の前についていた。

 

ああ。怖い。

 

謝ったらいいのか、何か頑張ります宣言したらいいのか。プランもないまま

「ただいま」と家に入ると、「おかえり」と言われて家に入れてもらえた。

 

「直紀さん・・・」

 

「荷物まとめる事にしたのか?」

 

先制パンチ・・・。

手ごわい。

ソファーで本読んでたのかな。伏せた本がテーブルに乗ってる。

 

何か言わなきゃって思うけど、口が渇いてるってぼんやり思って頭が働かない。

 

「踊る事は好きなんです」

 

「でも、認められないというショックと、自分に何が足りないのかもわからないし、正解が分からなくて」

 

あ。溜息つかれた。

 

「座れ」

 

隣に座るのはもとより選択肢としてはないけれど、向かいに座る勇気も無くて、かといって床じゃないよね?と戸惑ってると

 

「座れ」

 

もう一度言われてヨロヨロしながら、正面に座る。

2択ならまだ正面の方を選ぶよね。

 

「誰だって悩むことはある」

 

え?

 

「誰だって、正解なんて分からない」

 

「だから自分が出来る事をやるしかない。わかるな?」

 

「はい」

 

「でも、オーディションは通らなくって、何したらいいのかもわからなくなって」

 

「この半年、まじめに踊ってたか?自分ができる事には一生懸命取り組んでたか?」

 

それを言われると、『はい』と言っていいのか分からない。

 

「他の人の意見を聞くことも、アドバイスをもらう事も、するべきだと思う。だが、決定権を誰かに明け渡すのは駄目だ」

 

「俺がなんで昨日怒ったのかわかるか?」

 

「俺がオーディション受けろとあの場で言ったら、俺が受けろと行ったからという気持ちで彩花はオーディション受けに行く事になったと思う」

 

「人は、色々な事を言う。人は責任の無い所で発言してくる。だから、その中で自分でどうしたいのかを決める時は、自分で決めろ。自分で決める権利を放棄するな」

 

「自分の事は自分で責任を取れ」

 

「はい」

 

 

何にも言えない。うじうじしている自分を見られて恥ずかしくて、それで怒られたと思っていたけれど、

もっと基本的な事だった。

私、基本的な事にさじを投げてた・・・。

 

「それと、もう一つ」

 

まだある・・・の?

 

「俺はお前が言って欲しい言葉を言うつもりはない」

 

え?

 

「彩花の面倒を見るという責任を果たす上で、お前が言って欲しい言葉を俺が言ったら、お前はそのあと自分で何も考えなくなるからな」

 

「俺がお前の言って欲しい言葉を言う関係になったら、立場上、上である俺に常に判断を俺にゆだねようとするだろうし、俺の顔色をみて行動することになるだろうから」

 

うん。まあ。確かにそうかも。

 

「自分が苦しい時に、自分が言って欲しい言葉を言ってくれる人と居るのは居心地がいいだろう。ずっとそういう道を選択するのならそれは彩花の人生だから、自分で決めろ」

 

「俺のやり方は今、伝えたから」

 

突き放されたような気持ち。

でも、人に判断してもらうのは、私も好みじゃない。ここに来ることだって自分で決めた。

 

 

「人は、弱い生き物だから、傷ついた自分を包んで癒す時間はあってもいいと思ってる」

 

「だが、それは、半年で十分なんじゃないか?」

 

ドキッ。

 

「自分の現実を見るのは辛くても、厳しい意見にも耳を傾けないとな」

 

一瞬、弱くてもいいといわれて安心した後に、さらなる言葉が心臓に突き刺さる。

何本も刺さってさらにえぐられるようなダメージに顔面蒼白。

 

この人は、ずっと見ていてくれてて、

私が頑張るかどうか見守ってくれてるんだよね。

 

だけど、ぐずぐずしてる私についに喝を入れるためにこういう事を言ってくれてる。

それもわかってる。

だけど、言葉が厳し。グサグサと刺さって、本当に痛い。

 

 

「ずっと自分の現実から目を背けて、優しくしてほしいというのを全面に出して意固地になるのなら、荷物をまとめろ」

 

「実家に帰れと言ったのはそういう事だ」

 

立ち直れない・・・。

そう思ったところにこの最後の一言が再び突き刺さる。

 

「ここに居たいです」

 

すごすご退散するなんてやだ。

ああ。本当はとてもシンプルな事だったんだ。

 

直紀さんに踊りを教わり、自分なりにそれを表現していきたい。

 

最初のオーディションでは、受かってもうからなくても、

自分が表現したいという思いで望んでた。

 

そのあとは、通るかどうかにびくついていた。落ちたら恥ずかしいというつまらないプライド。

 

次も、次も、オーディションに落ち続けたらどうしようって思うと受けるのが怖かった。

 

「踊る上で自分が大事にするものが、自分の中にあるのか?」

 

「あります」

 

力強く答えていた。

 

私はここで頑張るしかない。オーディションもちゃんと申し込みしよう。

 

「昨日はすみませんでした。自信なくして、優しい言葉をかけられる事を期待してました」

 

恥ずかしいけど、ちょっと声が震えたけれど言えた。

 

顔は上げられないから、視線外してなんとか言ったんだけど、頭撫でられた。

 

絞り出すようにして、やっとの思いで言った言葉は受け取ってもらえた。

 

あんなに厳しい事を言うくせに。ずるい。

頭撫でられたら、また弱っちい自分に戻りそう。そうなったらどうしてくれる!

と心の中で毒づきながら精いっぱい自分を奮い立たせてた。

そうでもしないと、『期待していた』と口に出した言葉が

あまりに恥ずかしくて、この場から逃げ出したくなる気持ちを押さえられない。

 

「何度も言うが、俺の言う事が正しい訳でもない。そして人は迷って当たり前だ」

 

「はい」

 

声がかすれた。本当に口の中が渇いていて、喉がカラカラになってる。

 

「正しいか、正しくないではなくて、一つの事は多面的な要素で出来てるから、意固地にならず人の意見は聞いてみるのは悪くない」

 

「はい」

 

「やりたい事ばかりじゃないよな。人生。でも自分でやると決めたら、やれ」

 

「はい」

 

 

「それと、ここに居る事に決めたのなら、約束守らなかった時はお仕置きする」

 

えっ。なんでそれいま言うの?

 

え?え?

 

「知ってます」 

 

「美穂の家に泊まるの、お前から外泊すると連絡受けてないな」

 

「え?えええ?だって、美穂さんが直紀さんにあの場で言ってくれて」

 

「言っただろ?自分の事は自分で決めろって。あれは美穂が決めたことだ」

 

「お前は泊ってもいいかと俺に聞いたか?許可を得てないなら連絡なしの外泊だよな?」

 

 

い、いいがかりだと思う・・・。そんなの。

 

だって、今日のお説教だけでも十分にきついのに、お仕置きされると思ってなかったし。

 

 

「だって」

 

直紀さんも私が美穂さんの家に行くって聞いてたのに、ひどい!!

 

「泊まってもいいと、彩花に言ったか?」

 

「まあ、美穂にも返事はしていないけどな」

 

悪魔。

 

こんなきれいな顔してて、

こんなに芯のあって、頼りがいがあって、尊敬してる人のに。

時折見せる、この悪魔的なハメ方。震える。

 

「気が付かなかった。許可貰わなくちゃいけないってこと」

 

「連絡しろといつも言ってるだろ。じゃあ、連絡すること忘れないようにご希望通り追加のお仕置きな」

 

やばい。何か言う度にやぶへびになる。

お説教で防御するための脳がコテンパンにやられた後だから、ついうっかり本音がポロリと

後先考えずにでちゃう。

心のダメージだけでも相当なのに、その上、お仕置があるなんて、無理。

 

「ごめんなさい。ちゃんと連絡するし、ちゃんと約束守るから」

 

「から?『から』なんだ?」

 

「その」

 

「お仕置きはしないで」

 

「ダメ」

 

勇気出していったのに、あっさり門前払い・・・。

 

「人生に前向きになったのに、お仕置きされたら、気持ちがまた落ちちゃう」

 

「それ位で落ちる気概なら実家に帰れ」

 

・・・

 

「連絡してないで、美穂さんの家に行ってごめんなさい。実家には帰さないで」

 

今日は泣かなかったのに。

ポロポロと涙が落ちるなんて、もう、やだ。泣いてるところ見られたくないのに。

 

「痛くする前から泣いてるんじゃ、大変だな」

 

ずっと、家に帰されないようにと気持ちを張ってたから頑張れたのに、

『優しい言葉をかけられる事を期待してた』と認めて自分の弱さに直面して、

気持ちがグラグラしているところにお仕置きって言われて、

嫌すぎて、でも、とにかく帰されたくないって思ったら

悲しくなって、もう感情が色々あふれてて、勝手にに涙が出てた。

 

「怖くて泣いてるんじゃないです」

 

「まあ、いい」

 

あ。今絶対笑った。ふっって声が漏れたからね。聞こえたからね。

 

「膝に来なさい」

 

結局お仕置き?

やっぱりなんでーーー。という思いはある。ちょっとある意味罠にはまった感じがする。

今日のお仕置きの理由はこじつけだと思う。

 

「傷心理由で何してもいいと思ったら大間違いだからな」

 

毒づいてるのは心の中だけのはずなのに、なんかもう、やだこの人。

 

直紀さんとの約束は守りたいと思うよ。いつも守ろうとは思ってるよ。

でもこれは口では言えない。

どれくらいお尻叩かれるかまだ分からないから、一言、何か言った事で

いちゃもん付けられて、追加されたら怖いから。

 

ああ。やだなー。もう膝に乗るの、本当に嫌。

ソファー座ってる直紀さんの膝にしぶしぶ乗る。あまりぐずぐずしてるとさらに追加とか言いかねない。

 

「今日言った事は、ちゃんと自分で実行するんだな?」

 

「します」

 

「オーディションも受けます」

 

膝の上でいう事じゃないけど。言えなかった事をついでにこのタイミングで。

 

「俺は受けても、受けなくても構わない。だけど彩花が受けると決めたのなら応援する」

 

 もうさっさと終わらせてくれたらいいのに。と思っていたけれど、

応援するって言われてちょっと喜んでしまう自分がいる。

 

こんなに厳しいのに、こんなにオニみたいなことするのに、どこかちょっぴり優しさが見える時がある。

 

「はじめるぞ」

 

パンツおろされる瞬間も大嫌い。

最悪。

やだやだやだ。

 

わーん。おろされちゃったよ。恥ずかしい。

 

パチンパチンと始まった。

 

け、結構痛い。

 

痛い。え?うそ。強いと思うんだけど・・・

 

「直紀さん、痛い」

 

「痛い。痛い。ちゃんとこれからは門限より遅くなる時は自分で直紀さんに許可貰うから」

 

「だからもう許して」

 

「ごめんなさい」

 

「ごめんなさい」

 

「や。や。痛い。オーディションに響くし、痛いし」

 

「やだやだ」

 

「随分、『嫌だ』が多いな」

 

「だって、痛い・・・」

 

「10回我慢しろ」

 

そういって、痛いのを10回我慢させられた。

 

酷い。

 

10回だから、我慢できると思ったよ。

だけど、だけど、強く叩くなんて、酷い。

 

我慢できなくて、逃げようとするけど、腰に回した手でがっちり押さえられてて、

『逃げようとしたら回数増やすぞ』って言われたって、そんなこと言われたって

体はこのままじゃ危険と思うから逃げようとするのは自然だと思う。

 

 

「10!」

 

バチーーーンととびっきり最後の1回は痛くされて、終わったというのにジンジンしてて

余りの痛さに動けない。

 

「反省してるな?」

 

「してますぅ。ごめんなさい」

 

降りようとしたのに、う、動けない。なんで?

 

「今から追加分な」

 

「え?」

 

「忘れっぽいみたいだな」

 

ドS

 

「連絡するの忘れないように追加分だったが、それも忘れてしまってるようだったら、しっかり覚えてられるようになるよう躾しよう」

 

躾け・・・

 

いい。そんなもの。

 

しなくていい。

 

いい!!!って言ってるのに、いたーーーい。

 

痛い。痛い。

 

オニ。

 

容赦ないじゃん。痛い・・・のに。

 

バカバカ。

 

もうやだ。

 

お尻痛いよ。

 

もう無理だって。

 

無理なのに。

 

無理なのに終わってくれない。

 

パチン

 

パチン・・・

 

 

 

「冷たいタオル取ってくるからどいて」

 

「お、終わり?」

 

「終わり」

 

よかったーーーー。

 

痛かったよう。

 

よろよろと膝から降りたけど、めっちゃ痛い。

 

お仕置きされると思ってなかったから。まったくの想定外でお仕置きされるという事は

受け入れがたい展開。

 

「反省したんだな?」

 

「しました」

 

「反省内容を言ってごらん」

 

つっぷして、お尻の痛さをこらえてる私にさらなる質問。このドSめ。

 

「えっと。お尻痛くて頭がショートしちゃってて」

 

「彩花、いい度胸だな」

 

「あ。今、今からすぐに言います。ちょっと待って」

 

「5.4.3.2.1」

 

「膝に乗るか」

 

「やだ。やだやだ。もう終わりって言ったのに、やだ。もう終わりだもん」

 

「痛い。痛い。ごめんなさい。ちゃんとします。反抗的な態度取ってごめんなさい」

 

5、6発は叩かれた。

 

もう!!!オニだ。

 

「で?」

 

ドSでオニだからね、この人の辞書には、痛くて可哀そうだからちょっと待ってあげるとか、無いんだよね。

 

「直紀さんと門限守るという約束必ず守るし、遅くなる時は事前に連絡するし、遅くなる時は許可もらってからにします」

 

「今回それが出来てなかったです。ごめんなさい」

 

「よし。だいぶ素直にになった」

 

「まあ、いいだろう」

 

やっと冷たいタオルを乗せてもらった。

 

お仕置き終わり。

 

ああ。身も心もボロボロだ。でも不思議。いろいろ後悔とか、出来ない事への恐怖とかたくさんあって押しつぶされそうだったのに

お仕置きされたら、なんかもうすっぱりそれは過去の事って思えて、

心の重しが無くなってる。

 

あれだけ怖いお説教されたら、意識も変わるか。

 

『自分が変わりたいと思ったら変わるんだよ』

 

そういえば、そんなことを前に言われた事があったっけ。

 

 

 

 

「直紀さんは、なんでもできるし、強靭な精神もってて羨ましい」

 

って言ったら、

 

「見習え!」

 

そういって笑ってくれた。

 

 

笑ってくれるのは、ほっとする。

 

あんなに怖かった人が、もう今は私の成長を応援してくれる人だと思える。

 

 

それにしても、本当にオニなんだよな。この人。

 

普通こんな弱ってる子に荷物まとめて帰れとか、お仕置きするから膝に乗れとか言わないでしょ。

 

でも、その環境に居続けると選んじゃったんだよね。私。

 

『自分で選んだ事が違ってたら、その都度、こまめに起動修正すればいい』って言われたけれど、

私の師匠は直紀さんだと決めて飛び込んだ事は後悔していないし、軌道修正しようと思う事は一生無いと思う。

 

唯一、お仕置きだけはいつか無くなって欲しいとは切実に願う。