道3
2013/06/01
信じられない。
本当に連れて行ってもらえないんだ。
駄目って言われたら、本当にダメなんだ。
もしかして、連れて行ってくれるかもって思ってたのに。
あんなに楽しみにこの日を待ってたのに。
芸能人が見たい訳じゃなくて、直紀さんがスターに、そう、輝くオーラを持っている人と
仕事する姿が見たかったな。
私のバカ。
卑屈になって、人を試すような事して、こんなに辛い罰ってない。
中学の時、学校には友達が一人も居なくて、
でも、ダンスの仲間がずっと私を支えてくれた。
高校に行ったら、その仲間が支えだった。
いつか、それでも誰も私の周りからいなくなるかもしれないと思って、怖かった。
私が人懐っこいのは、私に魅力が無いから、自分をあわせて売り込んでいるだけ。
それが分かってるから、直紀さんの所に置いてもらえないと言われて
心臓に剣が突き刺さるように怖かった。
ずっと、憧れてた。
自分をもって、自分の芯があって、そして、自分で道を切り開いている人。
お尻丸出しで叩かれるなんて、
子供みたいに恥ずかしい。
そうだった、お尻冷やしておかないと。
それにしても、明日もお仕置きって・・・。
今日も、本当の事言うまで許してもらえなくって、怖かったけど、
明日も???
明日のお仕置き無くなればいいけど、
今も本当に連れて行ってもらえないとなると、明日絶対にお仕置きされるって事だよね。
嫌だ。
お仕置き。
恥ずかしくって、耐えられない。
憧れてた人は、鍛えているだけあって、私の動きは完璧に封じられて、
逃げ出そうにも、膝から逃げ出す事できなかった。
お行儀が悪いと言われて、追加もらっただけ・・・。
せめて、スカートの上からだったら、我慢できるのに。
ああ。お尻が熱くジンジンしてる。
今頃はスタジオでウオーミングアップとかしてるのかな。
いいな。直紀さんの振り付け姿見たかったな。
***
「直紀、彩花ちゃんは?」
「置いてきた。美穂の入れ知恵により、俺を試した罰」
「ちょっとー」
「彩花ちゃんに優しくしてあげなさいよ」
「俺の所に来たいっていったのは、あいつだし、横暴な俺の所に残ると言ったんだから
俺が責任もって躾ける」
「あら?残るって言ったんだ。可愛いね彩花ちゃん、けなげだよね。直紀は、女心全く分からなくって、女の子泣かせてばかりなんだからその点、優しくしなさいよ」
「はいはい」
「もう」
「俺のやり方は、体育会系なの」
「バカの一つ覚え」
「はいはい」
おふくろといい、女はどうしてこうガミガミとかみついて切れやすいんだ。めんどくさいな。
***
「ただいま」
家の鍵をあけて、電気が付いてた。
一人暮らしでも、誰かがいても、なんとなく『ただいま』という習慣がある。
「お帰りなさい」
もう深夜回ってるんだけどな。
「夜更かしして、明日起きられないぞ」
「子供じゃないです」
ふくれっ面する所が子供だっつーの。
「お尻冷やしたか?」
「な!」
「何言うんですか」
「ちょっと見せて」
「嫌です」
「彩花」
「ここに来なさい」
静かに、低い声で言うなんて、ずるい。
「ん」
「一応な、大事なお嬢さんだからな」
「大事なお嬢さんだったら、お仕置きしないで」
「なんか言ったか?」
・・・
「彩花~」
鬼。
「どうするんだ?俺が出掛ける前に分かったって言ったんじゃなかったのか?」
「いいんだぞ、田舎に帰っても」
ずるい
そんな二択しかないなんて。
「どうする?」
言わせる気だ。
「俺は、悪い事したらお仕置きするけど?」
「嫌なら、ここには置いておけない」
「ここに居たいです」
「で、でもせめて、スカートの上からにして・・・」
「ん?」
「スカートの上からでも恥ずかしいけど、それなら我慢できる」
「あ。っそ」
「じゃあ、お尻にお仕置き。我慢できるなら、悪さしそうだから」
墓穴?もしや。
「わかった?」
「あやかー。いい加減返事すぐできないなら、膝に乗せるぞ」
「はい」
蚊の泣くような声でやっと返事をする。
ワンコしょんぼりだな。可愛い位に喜怒哀楽が見て取れる。
「お酒飲んだ罰は明日たっぷりするから、今日はもう寝ろ」
わざわざ宣告するなんて。
怖いよー。
「返事!」
パチン!
「はい!!」
「今度から、態度わるかったら、それもお仕置き」
「やだ。やだそんなの。身が持たない~」
「俺は、もう寝ろと言ったんだぞ」
駄目なものは、駄目。なんだか薄々分かってたんだけど、
本当に、駄目なんだ。仕方なく、返事した。
「はい」 って。
「よし」
「よくできました。おやすみ」
ずるい。大好きで憧れてる人に頭なでられたら、キュンってなる。
お仕置きなんて、恥ずかしくって、死にたい位に辛いのに、
今日は何度も、よしって頭撫でてくれて、ものすごく嬉しかった。
直紀さんのスタジオレッスン。明日は連れて行ってもらえるかな。
尊敬してて、憧れてて、雲の上のように遠かった人は、
やっぱり大好きだけれど、近くなった今、向き合ってくれるのは嬉しいけれど、
叱られる時は本気で怖い。
ものすっごく、痛くて、恥ずかしくて、どうにか逃げ出したい。
どうにかこのお仕置きだけは無くなればいいのに。
怒ると本気で怖い人として、今、情報が追加された。
~蓮の花~