アオ14
2016/11/05
「いいな。大学生って休みが多くて、休みの間にバイトと好きな事してるだけじゃん」
「ふーちゃんはちゃんと勉強してないのバレタラ、叱られるぞ」
「アツシさんの意地悪」
「いいのか―?油売ってて」
「油じゃなくて、甲斐君の演奏聞きに来てるんです!」
「勉強ちゃんとしてるのか?」
「してるしてる。私これでも成績いい方ですから」
「そんな事言ってて、テスト悪い点取ったら叱られるぞ。出入り禁止かもなー」
「悪かったら言わないもん。テストあるの。言わなきゃバレナイでしょ」
「ふーちゃん?」
ぎくっ
「よく聞こえなかったから、今の話、そっちの椅子でゆっくり話そうか?」
「あ、帰ろうかな。今日は、もう帰る」
「ふーちゃんはこれからも演奏見たいのなら答案これから全部見せなさい」
「な、なんで?」
「練習見に来たいのなら、通行手形」
「勉強ちゃんとしないなら、出入り禁止」
「ふーちゃんの本業は勉強する事でしょ」
女子高生の本業は女子力磨く事だよ。甲斐君。全然分かってないな。
モテるくせにどこに目を付けているんだか・・・。
たわいもない会話に、目くじら立てるなんて甲斐君ちょっと真面目すぎる。
テストの回答見せに来たら、それだけ今より頻繁に来る事になるから、
勉強する時間が減っちゃうと、屁理屈言ってなんとか見逃してもらった。
でも、通知表は見せると約束させられた。
なんであんな事になっちゃつたんだろう。
甲斐君が最悪のタイミングで登場するんだもん。
終業式。
成績は悪くない。
帰り道。不安のあまりトモちゃんに聞いてみる。
「トモちゃん、甲斐君気づくかな?」
「た・・ぶん・・・」
だよね
肩を落とす私にさすが親友。
「ふーちゃんがびくびくして渡さなかったら気づかないかも!平常心だよ!」
「ガンバロ!」
全然自信なかったけど、約束どおり通知表を見せにトモちゃんのお家に寄る。
まさか、通知表見て、明日行く事になってるライブに来ちゃダメとは言わないと思うけど。
ああ!
不安。
「逃げ出さずに見せに来たなんて偉いな」
見せないと酷い目にあわせるくせに。
ふわっと頭撫でられてご機嫌にはなったけど、気は緩めないように。
「確かに、成績いいんだな」
「うん」
「もう、いいよね」
さっと見たら、お終いだからね。
甲斐君にじっくり見られたら困るから、さささっと返してもらう方向へ。
「ふーちゃん、なんか言う事ある?」
手元に戻ってきた通知表の端が、その一言にびびって力を込めたせいか折れちゃった。
「特にない。もういいよね?ね?ちゃんと見せたし、そろそろ帰ろうかな」
「ちょっとギター置いてる部屋に行こうか?」
お茶しようか?位の自然な軽い誘い方。
目の端でトモちゃんに緊張が走ったのを捉える。
「や」
「成績悪くなかった」
半べそ。動揺が走る。
「あんまり早く取り上げられて、よく見えなかったから、
右ページ下の先生からのコメント欄、今ここで声出して読んでもらおうかな?」
・・・
見つかってた!
やっぱり!
そして、さりげなく、あくまでさりげなく、秘孔を一撃。
「ふーちゃん?自分で言えないワルイコはギター部屋でも仕方ないんじゃないか?」
「ほらおいで」
肩に手をまわされてホントにこの人、何する気??
こんなドキドキするような事をしれっとするのに、今からお仕置きだなんて。
ありえない。
『ほらおいで』だってさ。
そんな、犬呼ぶ見たいに。軽く言うけど、『ハイ』なんて言えないよ。
言えない私のお尻をポンと叩く。
完全にお仕置きするよという予兆である事は間違い無いサイン。
重い足どりでどうにかのろのろと一歩一歩ついて行く。
「何か言う事ある?って聞いたのにごまかそうとして」
「成績はちゃんと頑張ったもん。約束守ってるのに」
思わず不満の声になる。
「注意力が散漫気味なので、今後の成績に影響が出ないように生活態度もきちんと頑張りましょう」
「たまたま成績は落ちなかったけど、こんな事書かれてバンドの練習見に来る許可なんて与えられないな」
「それも、自分で言わずに、俺が気が付かなかったら良いと思ってだろう?」
・・・・
「明日のライブ見に来ちゃ駄目って言われたら困るから、黙ってた」
「約束は約束だからね。明日のライブは見に来てもいい」
「え?ホント?」
「でも、何でも正直に言うっていう約束をふーちゃんは破ったんだからそれは反省しような」
「やだー」
「やだじゃない。膝においで」
「正直に見せたのに、甲斐君お仕置きするなんて、ひどい。ふゆ、お仕置きやだ」
スカート押さえて、お尻を隠す。
正直、成績が落ちて無かったから、それほど心配してない。
むしろ良かったと安心したものの、ふーちゃんは突然暴走する事があるから、
反省させておかないと、このままどんどん調子に乗らないとも限らない。
それほどお仕置きしなくてもいいと思ってるんだから、素直に膝に乗ってくれよ?
「ふゆこ」
しぶしぶ、甲斐君の前に立つ。
甲斐君の顔を恐る恐るちらってみたら、
ボンボンって膝を叩く音。
乗れって事だよね。
思わず息が漏れる。
えいっとあきらめて膝に乗る。
「ちゃんと、勉強も生活態度も頑張る?」
軽く腰にまわされた手。もう逃げられない事を示唆してくる。
「頑張るーーー」
だからちょっとにしてーーとは言えないので、ぎゅっと手を握り締める。
「ライブ見たいから頑張るー。絶対頑張るからもっと見に行きたいー」
「今年はもう明日で見おさめだからな」
「もっと見せて―」
「こら調子乗るな」
やや。やだ。スカート捲られた。
わーん。下着おろさなくったっていいのに。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。
ペチン ペチン
「いきなり始まるのやだー」
嫌すぎて叫ぶ。
「やだ。甲斐君。痛いのやだ。もう終わりにして。おまけしてー」
「明日ライブだから、終わり。終わりがいいー。お願い。やだー」
「ま、成績悪く無かったからな。10回我慢」
そういって、10回ビシビシとお尻を叩いて終わりにする。
『勉強頑張ったな』っていったら調子に乗りそうだからな。ふーちゃんは。
本当はお仕置きもしなくていいと思ってたけど、まずいと思ったら、必至に隠そうするのは見逃せない。
「ふーちゃん、隠し事は無しだぞ。約束な?」
ふえ。
約束苦手なの―。
「わかった?」
顎つまむんてずるい。
コクッテうなづくしか無いじゃん。こんな指の綺麗な人にそんな事されたら。
ずるい。ずるい。
分かっててやってる。絶対に。
「ライブ、見に行ってもいい?」
「明日のライブはいいよ。おいで」
「明日だけじゃなくって、その、もっと一杯見たい」
「その話はまた今度な」
「明日のライブ見てから考えたら?」
見る前からまた見たいって思うに決まってるのに。
「ふーちゃんは学業ちゃんとやる事」
「やってる!やってる証拠ちゃんと見せた!!」
「今日はこれで終わり。それとも、あまりぐずぐず言うなら・・・」
ちょっと怖い声を出す。隙あらばな所はあるみたいだけど、頑張ったのは事実だもんな。
曲を聞いてる時に、まっすぐな目を向けてくるふーちゃん。
今日はとっくに許してる。
「わかってるから、もういいです」
鬼っ子。意地悪。甲斐君に『良いよ』って言わせるのって本当に大変。
むくれる私におかまいなし。
甲斐君の演奏が聴きたい。
甲斐君の歌声が聞きたい。
甲斐君が「ふーちゃん」って優しく呼んでくれるその声が聞きたい。
つい目で追ってしまう。
私のヒーロー。
優しさだけで出来ていたらいいのに、なぜか実態はちょっと厳しめのスパイスが・・・。
厳しくなくていいのにね。それでも甲斐君が大好き。
~蓮の花~