アオ7

2015/04/11

甲斐君の事、ついつい目で追ってしまうほど大好き。


細く長い指が綺麗な動きを見せる時。

音の世界に入り込んだ時の表情。

目の色がキラッと力強く変わる瞬間、音の波長につられて私の興奮はマックスになる。

練習の合間にちょこっと声をかけてくれたり、皆との会話に耳をそばだてるのが幸せ。
調子に乗ってると、コラって怒ったふりするけど、なんだか、何もかもひっくるめて懐の広さを感じてしまう。

お仕置きの時は、厳しかったな。
うまく表現出来ないけど、筋が通らないことは、全然聞いてもらえなくって、きちんと出来るまで、何度も何度もやり直しなんだもん。

そんな、意味のわからない事する

甲斐君は基本は優しい。

甲斐君はだから、女の子がいつも周りに居て、本人的にもモテるあの感じががあたりまえなんだろうけど、もっと硬派でふゆこだけを見て欲しい。

かまって欲しい。

願っても仕方ないのだけど、ライバルが多いのが悩み。

皆に優しくって、皆に気を配れてしまう人。そんなの嫌なの。

ワガママで、勝手なこと言ってるなんて百も承知だけど、ふゆこだけ守ってくれる、叱ったりしない青レンジャーになってくれたらいいのに。

「ゲスト出演するんだってー」
と知美から聞いて、もちろん見に行く!って直ぐに思った。
アツシさんの母校の文化祭。
OB枠だって。
男子高なんて、ちょっと楽しみだね。なんて言ってたまでは良かったんだけど、体育館のむさ苦しといったら…

甲斐君たちが出た、トリの一曲はなんだか異様に盛り上がり、観れたのは良かったけど酸欠気味。

終わって、知美のお家での夜の打ち上げまで、一度お泊まりグッズ取りに家に帰るから、先に帰ろうとしていたら
「案内すよー」と言う結構しつこく、結構面倒な感じのグループが付いてくる。

「いいです。もう帰るので」

丁寧に答えてるのがいけなかったのかな?結構強引な感じで、カラオケに行こうとなって、困って立ち止まってしまう。

声をかけてもらうのは満更でもないけど、
カラオケは流石にどうなんだろう・・・。それに遅くなるのも困る。
甲斐君達を見たら直ぐに帰るからって約束して、今回はタバコとお酒も無い日中だからというので、
ライブはあと1回だけという約束とは別口として、バンドを見に行くっことをやっと許してもらったわけだし、
夜の打ち上げへの参加の方が重要。

「一曲だけ歌いに行く位、大丈夫だよね?せっかく来たんだし」

「友達も誘ってさ」
なんとなく断れない雰囲気になって、知美が断ったら、やっぱり行かないって言えばいいかなって、

「じゃあ…」と知美にラインしようとして、「友達に聞いてみようかな」と口から出た瞬間

「ふゆこ、帰るぞ」

と、聞き覚えのあるのんびりした声が背後からした。

「妹なんで、悪いな。保護者付きのまだガキだから、曖昧な返事したようだったら許してくれ」

ガキって!
失礼な!妹じゃないし!

布由子の事、子供あつかいして。酷いじゃなのー。
別に、カラオケなんて行こうと思ってないし、行くって言ってないし!

見つけてもらって嬉しかったけど、ふーちゃんじゃなくて、「ふゆこ」と呼ばれたのが気になって、怖いのと、気まずいので、プイとむくれてみた。
甲斐君に怒られた時、この前『ふゆこ』って言われて怖かったから。
なんとなく、不穏なにおいがする。


「布由子はファンであって、妹ではありませんから」

「ふーちゃん、今日の宴会は参加させないから」

「お家まで送る」

「や。なんで、参加していいし、祝日だから知美のお家にお泊まりしてもいい約束だった!」

「俺との約束破るような悪い子は、罰として今日の打ち上げは参加させない」

「それと、悪いことも分からないガキはお尻真っ赤になるまでベンペンだな」

ぞっ

公衆の面前ですけど?
目が全然笑ってないけど、脅し・・だ・・・よね?

「返事は?」

「打ち上げに行きたい」

「打ち上げは参加させない」

「ごめんなさいも言えないガキはお尻真っ赤になるまで、別途お仕置きする」

「やだー」

・・・

無視って・・・。嫌なんだけど。

「お仕置きやだ」

・・・

甲斐君、これでも私の精一杯の勇気なんだよ。

本当に、本当に嫌なの。

痛いのも、
恥ずかいのも耐えられない。

もう、絶対にお仕置きはされたくないのに。




「甲斐君は、その、怒っています?か?」

「ふーちゃん、カラオケに行くつもりでしたか?」

答えがわかってる質問したら、
甲斐君も同じ事してきた。

意地悪

アオレンジャーは隊員の行いについて厳しくチェックする。
アオレンジャーは隊員が反省するまで、絶対に追求の手を緩めたりしない。

アオレンジャーは
そして、なんでも分かってるくせに、ゴメンナサイを言うまで助け舟は出してくれない。

布由子がごめんなさいって言うまで。

わかってるけど。嫌なこった。
心臓がキューっとなる。

怖くって、ゴメンナサイって言えないの。

いまどき、そんなに目くじら立てて駄目って言われるような事でもないと思う。

甲斐君がモテるからいけないんだもん。

お仕置きじゃなくて

布由子にだけ、ただ優しくて、
ただ、ただ、甲斐君が奏でる音を聞いていたいだけなのに。
布由子にも、誰かがちょっと声かけてもらったと思ったら、そりゃ嬉しくなちゃったんだもん。

「送っていく」

そして、

送ってくれる間、気まずくって

でも、

でも

悔しくて

打ち上げ参加禁止されたのが、
すっごく嫌で

泣きそうになって

涙こらえながら、甲斐君の横を置いて行かれないように、必至に歩いた。

甲斐くんの厳しさが、ただ、ただ恨めしかった


「演奏、どうだった?」

あれ?もう怒って無いのかな。
しばらくしたら、甲斐君が声をかけてくれた。それまで無言で、息が詰まる感じだったのに。

嬉しくなって一生懸命良かった所とか、また聞きたいとか、ちょっと元気になって夢中で喋っていたら、
家の前で「お仕置きの日はまた、連絡する。ちゃんと反省しろ」
それだけ言って、帰っちゃった。


うそー。

演奏良かったという時、いつもの穏やかな感じで話聞いてくれてたのに?

許してくれたんじゃないの――――?


ええええーーー。打ち上げは、やっぱり参加不可なの?

「お兄ちゃん、厳しいから」

いつも知美が言うあの言葉がふと頭をよぎって、ぶるっと震える。