誠司は根気強い。
そして、あれから、半年経って、少しは成長した自分がいる。
自分自身の特質を少しだけだとしても信頼して、大切にしたいと言う気持ちになっている。
それに気がついたのは、周りから、最近いい感じだねとか、輝いてるねと言われるようになったから。
何でか分からないけど、褒められて嫌な気なんて起こる訳ないし。そうなりたかったわけだし。
恋とかそんなんじゃない。誠司が何故手を差し伸べてくれたのかは分からないけれど、
心から、感謝してる。
根気強く、見捨てずに、伴走し続けてくれた事。
自分がお願いして、(というか、半ば強制的にその流れになったけど、それを否定しなかったのは、やっぱり
自分がお願いしたと言う事だと思う)
頑張ると約束した事なのに、なぜ素直にその助言に対して真摯に取り組む事を何故できなかったのか。
ちっぽけなプライドで守っていたのは、
自分の中にある、恐怖心を直面しないように、自分を守ろうとしていたから。
恥ずかしい。自分の頑なさが。めちゃめちゃ、今にして思うと恥ずかしい。
未来なんて、誰だって分からない。
だったら、未来への恐怖にがんじがらめになって、一歩も踏み出さないでいるより、
今、
自分が幸せだと受け入れたら、只、それを受け取ればいいんだって
なんだかある瞬間に思えた。
何がきっかけだったか分からないけれど、いくつかの誠司の根気強いお説教により、目が覚めたんだと思う。
自分の中で腑に落ちて初めて、様々な言葉が染み入るようになってくる。
聞いているのと、自分自身がその言葉を受け取って行動するのとは、全く意味が違うのだと、当たり前なんだけど、その違いに漸く理解する。
この半年、どれほど泣いたか。
どれほど恥ずかしかったか。
どれほど、顔向け出来ないと、真っ青になったか。
分からない程の恥ずかしい思いを乗り越えて見てみた自分は、意外にも美しい存在だった。
特異な存在だった。
それは誰もがそうであって、
誰もが輝けるものを持っている。それを輝けるものをより磨くか、できていない所に向けて閉じこもってしまうかでは違いがでるけど。
自分が大切。
それがストレートに表現できてからが一歩なのだと、漸く言われていた事がちょっと分かった。
***
「でも?」
「でもってなんだ?」
急に口調が厳しくなって、その声のトーンに怯む。
「今の話を全否定する接続の言葉だけど?分かってて使ってるのかな?」
「できなかった理由なんてどうでもいい」
「今日も膝の上」
ああ!!!
分かっていたはずなのに。
なんで?
こんなに自分は成長したと思っていたのに。
「やろうと思ったんだけど」
「やってないのなら、どう思ったかなんて、関係ない」
「でも」
「2回目」
冷ややかな口調
「ごめんなさい」
「そうだね」
「ごめんなさいが大事だ」
泣きそう。
こんなに感謝して、尊敬しているのに、反抗してしまう自分が情けない。
小さい。
なんて器が私は小さいのだろう。
ゴメンナサイって言えない自分。
言いわけして、聞こうとしない。
「話を聞け」
「はい」
「話を聞いて、ちゃんと自分で体感しなかったら、それは分かった事にならないの。わかった?」
「はい」
しょんぼり
ようやく、分かってきたと思ってたのに。
気が緩んでいた私に雷が落ちた。
「膝に来なさい」
ああ、聞きたく無かったその言葉。胃の辺りがキューっとなる。
どんな怖い顔しているのか・・・
見ることもできない。
見つめる一点は、誠司さんのスリッパ。左足のみ。
そこからちょっと視線をあげれば大嫌いな『ヒザ』とやらが・・・。
「なな!」
ビクッ
「何度も言わせる気?」
嫌なんだ。
嫌なの。嫌なの。
お尻叩かれるの怖いし、痛いし、大嫌い。
悪いと分かってるのに、悪かったって口で言わされるのがたまらなく嫌なんだ。
「わかった。パドルにしよう」
「あ。ご、ごめんなさい。パドルやだ。ごめんなさい」
「なな、いい加減にしないと本当に怒るぞ」
もう、怒ってる。
完全に怒ってるのに。
「ごめんなさい」
「膝においで」
「はい」
「ぐずぐずと我儘言うのは悪い事だね?違う?」
「悪い事です」
「なんども、何度も教えてるのに、なんでそうなんだろうね?」
痛いから・・・
顔のこわばりは隠し通せない。やっとの事で「はい」と言えたのに、それだけでは許してもらえない。
追及の手は厳しいのだ。
「・・・」
「じゃあ、どれ位悪いか、分からない子にはたっぷりとお仕置きするか」
なんでこうなちゃったんだろう?
「『でも』は使わない事。ネガティブになるからね」 「わかった?」
「はい」
パンツをぐっと下げられた。大嫌い。大嫌い。こんな事するなんて、誠司さんのバカ。
ぐっと手を握って恥ずかしさをこらえてたら、パチンと左のお尻を叩かれた。
あっ。と思っている内に、段々早くなり、段々痛くなってくる。
痛いのを我慢できるようでいて、出来ない微妙な感じ。
痛いと言ったら怒られるから、頑張って我慢するも、そろそろ限界。
もぞもぞしたら、ぐっと腰に回した手に力が入り、さらに痛くなった。
!!
ありえない!痛い。さっきより断然痛い。
「い、痛い」
「痛い。無理、それ、それ無理だから」
「ごめんなさい」
「もうしない。もうしないし、言わないから。ゴメンナサイ」
「反抗的だったの、反省してる。本当にしてるから」
「今日はやけに素直に反省するんだな」
「よし。じゃあお尻冷やそう」
そう言って、冷たいタオルを置いてくれた。
やった。短め♪
痛かったけど、なんとか我慢限界超えてからの長期戦になるかと震えていたのに、終わったなんてラッキー。
しばらくタオルの冷たさに安心しきってたら、
「じゃあ、再開な」
って聞こえた。
嘘。
終わりだもん。
「終わりだと思った」
「終わりじゃないですよ。終わりなんて言ってないでしょ。パドルがまだあるし」
終わりだもん。
終わりだもん。
やだ。
ソファーに身を硬直させて、全身で断固拒否。
「さ、膝においで」
「やだ。痛いもん。さっきのだって痛かったんだもん」
「なな?」
「聞こえてないのかな?」
「最後通告だぞ。今すぐ膝に来なさい」
ビクッ
低い声。
怒ってる声。
怖い声。
「はい」
って言ったものの、喉はからから。何でこうなるの?
「素直じゃないと、色々大変なことになるね」
ああ、そうか。
また、素直じゃなかったんだ。
分かりきってる事なのに、まだまだ素直になれてなった。
パチン!
飛び上がる痛さ。
「大人しくしてなさい」
「それは、む、無理な痛さです」
「なな?」
「でも」
「でもは使わない」
「そうでした」
「大人しく我慢しなさい」
容赦ない一打。
ひーーー。っと息が止まって、痛さが通り過ぎないのに、また一打、また一打。
気が狂いそう。
何も考えられなくって、
痛くって、
ただ、止めて欲しくって、
何度もゴメンナサイって言ったけど、
素直じゃないからダメって言われて、数発さらに叩かれて漸く終わった。
冷たいタオルを置かれて、お説教されて、
素直な気持ちになって、ごめんなさいが言えるようになって、呼吸も落ち着いてきて、
気持ちも、落ち着いてくる。
そっと、髪の毛撫でられた。
「頑張ってきてるのは、わかってるよ。もう少し先を目指そうな」
ビクッとなった。わかってたんだ。この人。
分かってた上で、さらに上を目指そうか。目標はまだ先だったんだ。まだゴールでは無かったか。
「一緒にもう少し伴走するから、頑張ってみる気ある?」
こんな聞き方をする人なんだ。
NOなんて無いのわかってて、あえて、YESと言わせて宣言させる。
「はい」
「その為には、今これからもう少しだけお尻叩くよ」
「えええええ」
「膝においで」
私の抗議の声はさらっと流される。
今回は素直に膝の上に乗った。のろのろとだったけど、口答えはしなかった。
大嫌い。大嫌い。大嫌い。でも、尊敬してる。
全て分かって、こういう事をさせる。
中途半端で終わらない。
きっちり、これでもかと言う所まで認識させるやり方。
「よくできました」
「嬉しくない」
「あはは」
豪快な笑い声とは裏腹に、お尻にはきっちり痛いのがお見舞いされた。
手を抜かない。
きっちりと。
どんな時も彼は真剣に、誠実に向き合ってくれている。
漸くそれが私にもわかるようになってきた。
半年もかかった、その誠意が分かるまで。
怖いだけだと思っていた。
何故付き合ってくれるのだろうと思っていた。
責任感と、あと、何があるのかな?
そのうち分かる。
きっと私にもわかる時が来る。
もう少し成長したら、きっとわかる事があるはず。
「痛い!痛い!もう、もう無理~」
最後にはいつもの叫び。
私が自分で限界だと思っている所を必ず越えて来る人。
お仕置きじゃなくってそれを学びたい。もっと正面からそれについて学びたい。
その為には、私のちっぽけなプライドと頑固さを引っ込めて、
素直にならなくては。
自分の弱さを超える為に。
見て見ぬふりして自分をごまかしていたら
苦しいだけ。ちょっぴりだけど、言われている事が分かってきた気がする。
お仕置きされないように、課題遂行できたら尚いいな。
泣いて素直になるのなら、泣くような事される前に素直でありたい。
~蓮の花~