「いらっしゃい」
「おじゃまします」
誠司は、私の目を覗きこむようにかがんで「逃げ出さずに来て、偉い」
と頭撫でてきた。
彼氏だったら、キュンと来てた。
彼氏じゃなくても、なんか、キュンとした。
「こら」
「今どう思ったか、口にする」
「練習でしょ」
「怖かったけど、頑張ってきたから、偉いって言われて嬉しかった」
顔がこわばりながら、頑張って言う。
「顔あげて言えたらもっと良かったけど、今は、それで精いっぱいかな?」
こくんとうなづく。
「おいで」
そういって、リビングに通してくれる。
この人、どうやって生活してるんだろう。
凄く綺麗で、整理されたリビング。
棚には本が沢山で、雑誌に出て来そう。
なんで、こんなことに付き合ってくれるのかな。
不思議な人。
「この一週間どうだった?」
「どうって?」
「だーめ。そうやって隠すのは」
「はい」
・・・
咄嗟に気持ちを隠してしまう。
「自分の気持ちさらけ出して、受け入れてもらえなかったら、ショックだから、上手くできない」
「うん」
「だから、隠しちゃう」
「うん」
「隠して、理解されないのと、表現して理解されないのだったら、表現した方が
分かってもらえる機会は増えるよね?」
「人の事は気にしない」
「わかってる」
「わかってる?ほんと? 分かってても出来ない事ってあるから、もっと自覚して自分で変えようとしないと変わらないよ」
「わかってるってば!!」
ハッとなった。大声だしてた。癇癪・・起こすなんて。恥ずかしい。
「ご、ごめん」
「自分が分かってない時程、そうやって、受け入れるのが難しくって人は拒絶するんだよな」
「ごめん」
「謝る必要ないよ」
「お尻にお仕置きするだけだから。気にしなくっていい」
「や。嫌」
「なんで?」
「ここに来たら敬語って言ったはずだよ。出来てない事は一つ一つ教える」
正論すぎて、反論できない
「どうした?」
「敬語って約束したの忘れた?」
。。。
自分ができなかったという事を口に出して認めたくない。
意地っ張りだってわかってる。
こんな事で意地張っても仕方ないのだってわかるけど、言えない。
「いいなさい」
「やだ」
「しょうがない。膝の上で教えるか。来なさい」
ジーンズ履いてきたのに、脱ぎなさいって言われて、余計恥ずかしかった。
だったら、スカートにした方が増しだった・・よ。
パンツだけになってから、無理やり膝の上に乗せられた。
「恥ずかしい?」
やだ!!!
いやだ。返事なんて絶対にしない。
パチン パチン パチン パチン パチン
痛い。痛い。痛い。痛い・・・。
パチン パチン・・・
「質問に返事しなかったら、いつまでもこうだけど?」
えええーん。そうなの?
そういう事?
「恥ずかしいです」
「はい。よくできました」
「じゃあ、ちょっと痛くしようね」
え? ええええーー。
痛い!!!
さっきより、断然痛い。
さっきだって、痛いと思ってたのに、やだ。こんなの我慢できない。
我慢できなーーーい。
「痛い」
「痛いねえ」
「痛いように叩いてるからね」
「我慢できない」
「そうだろうね」
「でも、まだもっと痛くなるよ。今日は」
「な・・んで?」
「膝の上だと、ちゃんと返事できるね」
「お仕置きされなくても、できる」
「ちょっと冷やそう。道具取って来る」
空耳であって欲しい。道具ってなに?
「見てごらん」
??
なんか、木でできてる。小さい丸いもの。
「パドルって言うんだ」
「手よりは痛いと思う」
「これより痛いのなんてやだ。無理。しないで」
「来なさい」
「立って。聞こえてるでしょ?」
「甘やかすつもりないから」
「いや。お願い。無理だし」
「やりなさい」
「今日は、やりなさいと言った事出来なかったらどうなるか覚えて帰ってもらう」
「わかってる。わかってるから」
「わかってたら、できるでしょ」
しーーーん。
「追加しようか?」
最後通告。
世にも恐ろしい展開。
やっとやっと、スローモーションで動く。
助けてくれない。
ぐいって無理やり乗せてくれた方が、いっそ楽なのに。
「自分で来なさいって、なんでこんなに言うのかわかる?」
「嫌な事、自分でやりなさいって、何で言うかわかる?」
あ。
「賢いね」
「賢いけど、口で言おうね。その練習だから」
「やるって、自分で言った事してこなかった。だから?」
「そう」
「おいで」
そういって、最後はちょっぴり、助けてくれたの?
膝の手前まで来たら、そっと腰を押された。自然に膝の上に乗れるように。
本当は、最後の一歩が踏み出せなかったの、分かってたのかな?それとも痺れを切らしたのか?わからないけど、
そんな事、いいや。
「ああ!」
痛い。余の痛さに体がビクッとと飛びあがった。と思ったけど、実際は、腰に回されてた手で押さえられてたから、
次の一発が降ってくるのを避けられない。
もう一つ
もう一つ
「や。や。パドル嫌。それ痛い。痛い」
「やだ。我慢なんか出来ない。許して」
「自分の弱ささらけ出すのと、お仕置きされるのと、どっちなら、できる?」
「どっちも、どっちも嫌だけど、パドルは無理」
「どっち?」
「どっちっだって、いいよ。僕が決める事じゃないから」
「やだ。両方やだー!」
「あ!」
「そう。まずは、自分の気持ちを素直に受けとめようね」
「自分にとって、出来ないと思ってる事やるなんて、嫌に決まってる」
「嫌な事、それでもやろうと思ったんだよね?変えるために。そしたら、頑張って、自分に丁寧に、正直にならなきゃ、できないと思うよ。嫌だけどやろうと思ったのは何でだっけ?もう一回考えてご覧」
「心臓がいたいよー」
「ちゃんといいなさい。何でだっけ?」
「自分さらけだす」
「逃がさないよ。ちゃんというまで」
「弱い所」
「ちゃんといいなさい」
「自分の弱ささらけ出す方がいいです」
「うん。そうだね」
「ちゃんとわかったら、口の聞き方なってなかったの、反省しような」
「あと10発我慢しなさい」
「パドル嫌だって言ったのに!酷い。嘘つき」
「嘘はついてないよ。ちゃんと言わなかったらもっと多く叩いてただけの違いで、
叩くのやめるなんて、言った?言ってないよね?」
詐欺だ。
「始めるぞ」
「いたあーい」
涙がこぼれる痛さ。
叩いてる所が、また、痛い所目がけて叩いて来る。
良い性格してるよ。詐欺師だーーー。
「お尻が下がってる。ちゃんとしなさい」
「できない。できないよ」
「やりなさい」
「やれるまで、終わらないよ」
「やだ。10発って言った。約束だもん」
「はは。じゃあ、パドルは10発な」
そう。パドルの後に、さらに平手で痛いのお見舞いされた。
ぎゅって腰に回された手で動けない所に、痛いのが沢山降ってきた。
「自分は自分」
「わかってるけど、できない」
「できないじゃないでしょ。怖いだけ。怖い怖いって言っててやらなかったら
やらないで辛いままでしょ」
結構、直球だな。お説教。
「はい」
「わかってないな」
「もう一度おいで」
「わかってる」
「わかってない。来なさいと言ったら従った方がいいよ。パドルが出て来る前に」
!!
これ以上パドルは無理
「漸く素直になった。ななには厳しくした方が効果的なんだな。パドルは毎回登場させような」
「いや。パドルやだ。素直になるから、パドルしないで」
「素直だったら、パドルは必要ないね」
「素直だったら」
・・・誠司のバカ。
痛い!
~蓮の花~