「話聞いて欲しいんだけど、今から空いてたりする?」
気が付かなかったらそれでもいい。
メールを送ったことの達成感にほっとしてたらすぐ電話がかかってきた。
「いいよ」
「今どこ?」
「頭でまとまってなくて、感情グラグラ支離滅裂かもしれないけど」
「いいよ」
そういって、誠司が良く行くらしいバーで待ち合わせしてくれた。
一人で映画見に行って、涙ポロポロ。心が決壊。
駅前でグラスワイン飲んでみたけど、誰かに話したい。
家に帰ってもよかったんだけど、思い切って連絡してみた。
話したい相手は誠司だったから。
ずーーーっと私に寄り添って、叱咤激励してくれてきた誠司と話したかった。
「俺ビール、七海は?」
「モヒート」
オーダーした飲み物が目の前に来て、軽く乾杯した後、それを誠司は黙って飲んでる。
私が話し出すまで誠司は特に急かしたりするわけでも、水を向けるわけでもなく。
隣で静かに飲んでいてくれる。
意を決して話し出す。
「今日、一人で映画見てきてさ」
「うん」
「大分泣いちゃった」へへ。っとおかしい事言ってるわけでないのに笑うっていうのは恥ずかしさをごまかしてるのかな。私。
「私、別にフツーの人生だし、社会生活に困ってるわけじゃないし、チョット困難だなって思う事はあっても、
一人で生きて行けるし、生きなきゃって思ってて」
「強くなきゃ。って」
「うん」
「だから、誠司がずっと根気良く付き合ってくれたこと、感謝してるけど、どうしてしてくれるんだろうとも思ってた」
「人の事かまうなんて面倒な事じゃん?」
くすっ。七海はまあそうだろうな。俺は結構お節介だからな。そうでもないんだけど。
「放っておいたっていいのに、そばにいてくれてさ」
「ああ」
お酒の力借りなきゃ言えないよ。こんなこと。
「で、すっごく誠司の事が怖いくせに、もしかして誠司に依存してるかもとか思ったりもして」
「で、で、本当は強くならなきゃいけないのに、自分でちゃんと一人で頑張んなきゃって思ってるのに、依存しちゃう駄目な自分が辛くて」
「うん」
「人を頼れないって、自分以外信頼してないんだって。映画がね。そういう話で」
話がつながってるようで飛ぶな・・・。
「映画の中の主役の友達が、まるでお前みたいだな。っていうんだけど、本人はその話を受け入れようとしなくって、でもそれって主役がまんま、私のようで」
ちょと話が見えづらいな・・・。
「あ。もう一杯同じの」
「人に頼れないっていうか、相手が心開いて接してくれようとしてる事に対して、自分は心開けないっていうか」
「人が優しくしてくれるのは分かるけど、何で?っておもっちゃうし、自立しなきゃ。今のままじゃだめだって、そういう思いに取りつかれちゃう」
テーブルに置かれたグラス。
「なんか、支離滅裂だよね」
そこは自覚があるのな。
「私さ、いつも心の中でずっと一人で頑張んなきゃって自分奮い立たせて頑張ってた」
「知ってる」
「もしかしたら、もしかしたら、私の周りにいる人たちは、もっと愛情もって私に接しようとしていたのかも」
「映画みて、頑固な自分みたいだって思ったら、人間は孤独だし、だから、ずっと孤独なのは平気だと思ってたのに、
実は日常がもっと優しい世界だったのかもって思ったら、その事実を知った瞬間心が開きすぎちゃって、一人でこのまま帰れないなって思って」
「うん」
「我がまま言って、飲みに誘っちゃった」
「そっか」
誠司のグラスが綺麗な音を立てる。ウィスキーの琥珀色が氷に揺れて綺麗。
「話・・・聞いてくれてありがとう」
「そういう事、言えるようになったのな」
「支離滅裂だけど」
「それに、お酒の力がちょっと必要だった」
「最初だからな」
「許す」
「ふふ。許すって・・・」誠司の反応が思ってたのと違って思わず笑みがこぼれる。
最後までずっと話聞いてくれてた。
「話聞いてくれて、ありがとう」
「なんだ?酔ってきたか?」
「まだ平気。誠司にさ」
「ん?」
「ずっとね。依存したら駄目だからって我慢しなきゃって思いながら連絡したから、電話してくれたの嬉しかった」
「強くあろうとするのは、七海の趣味だからな。でも、人は弱いものだし、弱い自分さらけ出していいんだ」
趣味・・・って。
「彼女でもないのに、急な誘いだったのにさ」
「話しをずっと聞いてくれて、優しいなって」
「いやだったら断ってる」
「俺が来たかった」
え?それって?どういう・・・
「なんか、お説教されるのかと思ってたのに」
あわてて、思っても見ない事を恥ずかしさ隠すために言ってしまう。
「隠し事あるなら、家で続きは聞こうか?」
「隠してないよ」
「なな、今日は誠司に隠し事してない」
「そうか?」
「それ飲んだのなら一度家寄っていこうな?」
そういって、さっさと会計を済ませて、なぜか誠司の家・・・。
うそ。何でこうなるの?
え?え?だって、今の話の中で隠し事なんて無かったし。
「正直に言うなら今日は許してやってもいい」
「何もない」
すっと目を細めるなんて仕草みたら、綺麗すぎる顔にくらくらする。
「なーーんにもないよーーーー」
「さ、帰ろうかな~?」
「座れ」
ゾクッ
「七海?せっかく今日は自分から色々話せたのにな。隠し通すつもりなら厳しくするか?」
「や。やだ。なにも、悪いことしてない」
「そうか?」
「そうだよ。ひどいよ。濡れ衣だもん」
「待ち合わせ場所に来た時、煙草のにおいがしたけど?」
「吸った?」
「・・・・」
黙ったら自白したようなもの。
やだ。今日はやだ。お仕置きされたくない
「返事は?」
・・・
やだ。
「お仕置きだな」
びくっ
泣きそう。
「自分でやめるって決めたんじゃなかったっけ?」
「もう吸わないから」
「何もないなんて、嘘ついて」
「ご、ごめん」
「バレないように、こうやって陰でコソコソか?」
「それは止めたとは言わないよな」
「うん」
その通りだけど、今日はだって苦しくって。
心が悲鳴上げたときには、たばこが必要なんだもん。
「聞こえたよな?膝においで」
「いくつにしたらいいかな?」
それは独り言?それとも私に話しかけてる?怖すぎる
「お仕置きやだ」
「た、たばこは、その・・・」
「お酒も、たばこも飲まずに今度から俺に言える?」
「言える。ちゃんとします」
「それならまあいいか」
やった!見逃してくれた!なんだ誠司いいやつじゃん。
「さ、膝においで」
え?だって、もういいって、そういわなかった?
「な、なんで?お仕置きしないんじゃないの?」
「ああ、お説教はもういいかなって。ね」
紛らわしい。
「誠司は、鼻がいいんだね」
精いっぱいの嫌味。
「あー。俺がたばこ嫌いだから匂いは敏感かもな」
・・・
そんな嗅覚鋭くなくていいのに。もうやだ!!
「ほら、だらだら時間稼ぎしない!」
ペチンとお尻叩かれて、背中押されてその反動で膝に乗ってしまう。
「あまり痛くしないで。今日は心が痛くて、尻も痛くなるなんて、辛い」
「我慢できてもできなくても俺はお仕置きするけどな」
ぞっ。今この人怖い事言った。
「知らなかったのか?」
知ってるけど。
「やだ。痛い!痛い。痛い。やだ」
痛すぎる。分かってる言わなきゃいけない言葉がなんであるかなんて。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「禁煙する?約束する?」
出来るか不安
「なな?パドルがいるならそれでもいいけど?」
「約束する。禁煙します」
なに?選択権無いんじゃん。最初っから。
「痛いよーー」
「痛いように叩いてるからね」
「痛くて椅子に座る度に禁煙しなきゃと思い出すくらいには赤くしておこう」
もうすでにそのレベルは越えてると思う!!
「もう吸わないからー」
「今日優しくしてくれてたのに」
「それとこれは別の話でしょ」
「そうだけどー」
「ちゃんと話したのに。ちょっとおまけしてよ。ななの事どう思ってるの?」
ピタっと手が止まる。
あ。勢いで言っちゃった。
手止めたら恥ずかしいから・・・。
「大事だと思ってる」
「大事って?」
「好きってこと?」
何言ってるの私!バカ。お仕置きのはずみで言う事じゃないし、答え聞きたくない。
「ん?まあな」
え?え?えええ?
お尻出したままの色気ゼロだんだけど。どうしよう。
全身かっとなる。
パチーン パチーン
「痛い。いや。え?今のって?え?」
痛くてうまく喋れない。
「誠司?」
「今日はおまけだぞ」
そういってパチンと叩くと、終わりにしてくれた。
パンツ上げて、お尻痛くて聞くなんて全然ロマンチックじゃないけれど。
聞かずにはいられなかった。
「好き?」
「ああ」
「いつから、好きだったの?」
「さあな?」
「七海は?」
話そらすなんてずるい。
・・・
「ちゃんと答えないと叱られるんじゃなかったか?」
「バカ」
真っ赤になったお尻と真っ赤になった顔。
もう、こんな、こんなのってあり?
顔見せるのが恥ずかしくて、 誠司の首に腕をからませる。
「お仕置きの最中に告白したなんてさ、誰にも言えないよ。もっとロマンチックに告白したかった」
「お尻が痛くて、痛くて、すっごく反省してるけど」
「けど?」
そういって、絡めた手を首から外して、顔を見つめられる。
「なに?」
「お仕置きはこれからはもうしない?」
「それが聞きたかったのか?」
頭撫でられた。
「する」
びくっ
「な、なんで?」
「依存とか言ってるうちはするだろうな」
「彼氏になってくれるんじゃないの?」
「だから?」
「もういい」
「いいのか?」
「良くないけど、今はそんなことはなしたくない」
そういって、もう一度首に手をからめて抱きつく。
安心する。
誠司の腕の中。
いつも、怖くて、緊張して。
でもどこかで信頼していた。この人の事。
話してごらん
そういって、辛抱強く応援してくれてた。
お尻はズキズキするけれど、気持ちはすごく安心してて心地よい。
自分が自分で居られる人。
その人が私を包んでくれてる。
***
11/4 映画 ラストレシピをみて
~蓮の花~