般若34

2022/2/12

 

好きな人ができたのに、実らなかった。

 

頑張ったのになー。

 

でもそういう事もあるし。と自分で自分を慰める。

 

「もう、川手、メンドクサイ!」

 

つい声を荒げてしまう。

 

別に普段だったら何でもない事だし、川手にしてみれば、何でキレられるのか?という些細な事なんだけど。

要は虫の居所が悪い。っていうただそれだけの事。

 

それなのに、すみません。すみません。と謝ってくれる。

 

つい調整にのって、「ふん」とむくれて、そのままプリプリして廊下に出たところで会いたくない人が正面にいた。

 

「おかけ下さい」

 

と、台所に連れ戻されて、静かな声で進藤が言うから、ちょっとまずいかもという雰囲気を感知する。

 

「朝食食べて、片付けもせずにどこに行くんですか?」

 

・・・

 

「行儀が悪いですね」

 

・・・

 

振り上げたこぶしっていうの?川手に対して強気に出てた分、急に弱い所見せられない。

 

「川手が何かしましたか?」

 

・・・

 

「お嬢様のお怒りを買うような事をしたのでしたら、私が厳しく指導しておきますので、お納めください」

 

どうしよう。川手は別に悪くない。

 

どうしよう。進藤が指導なんてしたら、ボコボコにされちゃう。

 

「か、川手は悪くない」

 

「あ。いえ。怒らせてしまったのは俺なんで」

 

ばか川手!話が余計ややこしくなるから黙ってなさいよ。まったく。

 

「梨緒様?」

 

「説明いただきましょうか」

 

「そして、川手が悪かったのですか?もう一度だけお聞きしますね」

 

「悪くないです」

 

「では食べたものを片付けたら、別室で私がお話しをお聞きしたいと思いますので、お部屋でお待ちください」

 

こえーーーー。

 

うそ。

 

なんで。

 

ちょっと、癇癪起こした位で。タイミングが悪かった。

 

最悪。

 

最悪だ。

 

ついてない。

 

なんで進藤がいるの。

 

ああああ。ついてない。

 

「梨緒様?返事はどうされましたか?」

 

「はい」

 

「ちゃんとお話し聞いてから判断しますので、全部話してみましょうか」

 

にっこり笑わないで。

 

怖いから。

 

目が全然笑ってないし、むしろ怒ってるし。

 

「進藤怖いから言えない」

 

「なんで怖いんでしょうね?お仕置きされるからですか?」

 

そのデリカシーの無い直球やめて。

 

「お、お仕置きされるって決まってないと思う」

 

精いっぱいの訂正。

 

「そうですね。お話しをお聞きしましょうとだけしか私も言ってませんね」

 

「ただ、ぐずぐずとされるのは好みません」

 

「どうぞ?」

 

どうぞ・・・って言ってるけど、『吐けっ』と同義語だよね?

 

「ちょっと、むしゃくしゃしてて、でも何に苛立ってたのかは言いたくない」

 

「『言いたくないです』が正しい言葉遣いですね」

 

「言いたくないです」

 

「では言わなくていいです。何もかもお聞きする必要はないと思いますので」

 

え。いいの?

 

「苛立って、八つ当たりしたということでよろしいですか?」

 

ぐうの音も出ない。

 

「返事はどうされましたか?今日は何度も返事が出来ないことを即されていますので、これはお尻を叩いて躾けます」

 

びくっ。

 

決定・・・

 

「はい」

 

「その返事は、八つ当たりについての返事ですか?_それとも返事ができないお仕置きについてですか?」

 

「両方」投げ捨てるように答えて、そして観念した。

 

「敬語を使いましょう」

 

「両方です」

 

「では最初からどうぞ」

 

くそーーー。進藤の精神的な攻めはくる。

 

「川手は悪くないのに、八つ当たりして、怒ってごめんなさい」

 

・・・

 

しーん。

 

「それと、進藤に対しても態度が悪かったです。ごめんなさい」

 

しーん

 

え。まだ?

 

「進藤に敬語使うように言われたのに、何度もそうしなかったのも、ごめんなさい」

 

「いいでしょう」

 

「そういうことでしたら、お仕置きが必要だと思いますが、梨緒様はどう思われますか」

 

意地悪。

 

さっさと膝の上に来なさいっていって、さっさと叩いて、さっさと終わりにしてくれたらいいのに。

神経逆なでしてくるのは何でなの?

 

「悪かったってば」

 

「梨緒様?」

 

「ちゃんと返事ができるまで許しませんよ」

 

進藤と根競べしても勝てない。分かってる。川手のように、なんでも結局言う事聞いてくれたりしないのわかってる。

 

「反省してる」

 

「お仕置きされる必要があると思いますが?これを言うのは2度目ですね。2度言わせるというのがどういう事か分かりますか?」

 

「うん」

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。うんじゃなくて、『はい』でした」

・・・

 

 

沈黙がマジで恐怖。ドキドキした心臓の音と共に胃がぎゅっとなる。

 

 

 

 

「お仕置きが必要です」

 

 

 

「いいですか?あなたが我がままや、態度が悪いふるまいをするというのは、他の者がするのとは意味合いが変わります」

 

「梨緒様は若の妹さんでいらっしゃいます」

 

「望むと望まぬとその立場の人の発言であれば、理不尽な扱いをされようと、我がままを言われようと誰もそのことを止めたりはしないのですよ」

 

「誰でも調子の悪い時はあります。しかし、今回は度が過ぎてますので、私が叱ります。わかりますね」

 

「フラれて傷心なのはわかりますが、人に当たるのはいかがなものでしょうか」

 

「な!何で知ってるの!」

 

言わなくていいと言われたのが不思議だと思ってたけど、この、この、ああ。言葉が見つからない。

 

「態度を見ていたら分かります」

 

 

「他に話すことはありますか?」

 

「ない」

 

「梨緒様?」

 

「ないです」

 

 

 

「朝食の片づけが出来なかった反省がありませんね」

 

「嘘の申告と隠し事はいけませんね。その分は別枠でお仕置きしましょう」

 

オニ・・・

 

「理不尽な態度は不機嫌から来ていたなんて、本当に手の付けられない悪い子ですね」

 

だから、その精神的苦痛の言葉によるお小言はもういいのに。

 

「ごめんなさい」

 

謝ってひたすら回避。

 

「梨緒様が嫌いな道具も必要ですか?」

 

「や、や。それは嫌。進藤、ごめんなさい」

 

「ちゃんと反省してる」

 

「様子をみて、必要でしたらあとで判断しましょう」

 

進藤が私のベットに腰かける。

 

ああ・・・・。始まる。絶望しかない。

 

進藤がシャツの右手首のボタンをスッと外す。そして、腕まくり。

左手の時計が外された。カチャという金具の音が好きだけど、こういう時は聞きたくない音。

流れるような仕草で私の机に時計を置くと

 

「膝に」とだけ言われて、

ポンポンと膝を叩いて『乗れ』という合図。

 

 

進藤なんて大嫌い。

 

動けない。動けるわけがない。

 

真っすぐ正面から目を見られて、私は思わず逸らしてしまう。

のろのろと伏し目がちのまま、

本当にのろのろと膝に乗る。

 

 

そうしてすぐに下着を下ろされてパチンと痛いのが飛んできた。

 

パチン パチン

 

数回叩かれて、ビビりまくって、まだそれほど痛く無いけど「痛い。痛い」と言ってしまう。

 

「もう少しだけ痛くします」

 

ぐっと腰に回された手に力が入る。ヤバイ

 

バチーン バチーン

 

「痛い!!!」

 

「そうですね。私もどれほど力を入れたら、痛いかはわかりますので」

 

「我慢できるうちから、グダグダ言って、逃れようとしても駄目ですよ」

 

「今から痛くします」

 

ああああああ。

 

一打、一打が身に染みる。

 

オニ!!!どこが少しだけ?どこが、どこが・・

 

痛い。痛すぎる。

 

「進藤ごめんなさい」

 

「八つ当たりしない。自分の立場わきまえるから。もうしない」

 

「反省したんですか?」

 

「痛いのやだ。反省した」

 

「嫌でもお尻はもう少し叩きますよ」

 

もう少しって平然と言う言葉?空耳であって欲しい。

 

「しっかり反省しましょう」

 

そういって、泣かされた。

 

どんだけーーー。という程叩かれているのに、姿勢を維持するように言われて、

 

いやいやという態度を取ると、飛び切り痛いのがお尻の下の方めがけて襲ってきて、

また、ごめんなさい。ごめんなさい。ちゃんとしますの嵐。

 

 

「進藤にきちんと敬語使います」

 

と再度いうように言われて、終わった。

 

 

「川手には私から話しをしますが、梨緒様もきちんと八つ当たりしたことを詫びれますね?」

 

「進藤、川手は悪くないから」

 

「怒らないでね」

 

「川手は私への報告義務を怠っていますので、そのことについて話します」

 

・・・

 

「川手は川手で反省すべき点があります」

 

「まあ、原因は梨緒様ではありますが」

 

「ごめんなさい」

 

「わかったら立ち居振る舞いと言葉遣いを改める事です」

 

「はい」

 

「ではお尻を冷やしますので」

 

そういって、ひりひりするお尻に冷たいタオルを乗せて、進藤は出て行った。

 

はあ。久しぶりにやらかして、

 

久しぶりに進藤がめちゃめちゃ怖くて。

 

そして、なんでも筒抜けの情報通のくせに、現行犯を押さえるまでは泳がせておくとか、人が悪い。

 

 

 

 

**

若い時の感情なんて、そんなにコントロールできるものでもない。

不機嫌な時があるのも仕方が無い。

そこが可愛い所でもありますし。

 

まあ、大目に見てと思ってしばらく自由にさせていましたが、

流石にそろそろ自分でも日常に戻る方向に意識向けてもらわないと、

いつまでも、周りが甘やかしすぎますので。

 

道具までは必要ないと思ってはいますが、今日の我がままぶりでは

やはり定期的にまだお仕置きが必要そうなお嬢様ですね。